日本文化を探る
身近な日本文化を学ぶ ~天気予測することとは~
生活に欠かせない天気予報
私たちの日常生活において欠かせない天気予報。出かける前にチェックして「雨具を持って行く必要があるか」「雨なら、濡れても大丈夫な靴にしようか」「羽織るものが必要か」など、持ち物や服装を決める人も多いのではないでしょうか。また、天気の移り変わりだけでなく、洗濯指数や紫外線情報、体感温度指数、さらには花粉や黄砂の飛散量、PM2.5の分布予測まであり、生活に密着したさまざまな情報をテレビや新聞、インターネット、天気予報アプリなどからタイムリーに得ることができます。しかも、居住地域だけでなく、外出先の天気もピンポイントで知ることができてとても便利です。日本で初めて一般向けの天気予報が発表されたのは、今から約130年前の1884(明治17)年6月1日。毎日3回(6:00、14:00、21:00)行われたそうです。記念すべき6月1日朝6:00の予報は「全国一般、風ノ向キハ定リナシ。天気ハ変リ易シ。但シ雨天勝チ」という日本全国の予報をこの一文だけで表現したそうです。なんともふわっとした内容ですね。梅雨時でもあるので「とりあえず傘を持って出かけたほうがよさそうかな」といったところでしょうか。しかも発表といっても東京の交番などに掲示されただけだとか。
ことわざから知る天気予報
では、それ以前はどのように天気を予測していたのでしょうか? それを知るには天気に関することわざがよさそうです。まずは、晴れに関することわざ。
「夕焼けは晴れ」「朝霧は晴れ」「夏の入道雲は晴れ」「ヒバリが高く飛ぶと晴れ」など。
確かに、雲もなく夕日がきれいに見えると「明日は晴れるね」という会話をしたりしますし、濃い霧が発生した早朝は、昼から暖かく天気もいいなと思ったりします。実際にそういうことが多いですよね。
続いて、雨のことわざ。
「朝焼けは雨」「ツバメが低く飛ぶと雨」「山にカサ雲がかかれば雨」「ネコが顔を洗うと雨」「櫛が通りにくいときは雨」などです。
筆者の場合、どちらかと言うとツバメよりも羽虫が低く飛んでいると雨だなと思います。また、櫛が通りにくいよりも、髪がうねり出すと雨。あと、山にカサ雲がかかればということわざは、住んでいるエリアによってそういう山があるのではないでしょうか。筆者の住んでいるところから見える、ある山に雲がかかると、いつも近所のおじさんが「もうすぐ雨が降る」と毎回教えてくれます。
「朝焼けは雨」「ツバメが低く飛ぶと雨」「山にカサ雲がかかれば雨」「ネコが顔を洗うと雨」「櫛が通りにくいときは雨」などです。
筆者の場合、どちらかと言うとツバメよりも羽虫が低く飛んでいると雨だなと思います。また、櫛が通りにくいよりも、髪がうねり出すと雨。あと、山にカサ雲がかかればということわざは、住んでいるエリアによってそういう山があるのではないでしょうか。筆者の住んでいるところから見える、ある山に雲がかかると、いつも近所のおじさんが「もうすぐ雨が降る」と毎回教えてくれます。
ほかにもたくさんありますが、これら天気を予報することわざが、今も残っているということは高い確率で当たっているからということでしょう。それだけ、昔の人は、空や雲、動物の動きなどをよく観察していたということがわかります。
祈雨(きう)・止雨(しう)
上記のことわざから分かるのは、翌日ぐらいまでの予報。天気図のない時代は、現在のように10日先、2週間先の天気はわかりません。長雨や旱魃(かんばつ)が続くと農耕社会である日本にとって、国家としての根幹を揺るがす重要な災害の一つになりますよね。そうなると、もう天にお願いするしかありません。
「日本書紀」の皇極天皇紀の中に、雨乞いの記述が見られます。皇極元年6月17日、この月は日照りが続いたそうで、翌7月25日から、諸社の神に祈ったり、河の神に祈ったり、また、仏を安置し、経を読んで雨乞いをしたそうですがあまり効果がなかったようです。ついに、8月1日に皇極天皇が登場し、飛鳥川の川上で雨乞いをすると、大雨が降り天下は潤ったといいます。
「日本書紀」の皇極天皇紀の中に、雨乞いの記述が見られます。皇極元年6月17日、この月は日照りが続いたそうで、翌7月25日から、諸社の神に祈ったり、河の神に祈ったり、また、仏を安置し、経を読んで雨乞いをしたそうですがあまり効果がなかったようです。ついに、8月1日に皇極天皇が登場し、飛鳥川の川上で雨乞いをすると、大雨が降り天下は潤ったといいます。
そして、675年、天武天皇の時代には丹生川上神社(上社・中社・下社)が創建されます。中社の由緒によると「人聲の聞こえざる深山吉野の丹生川上に我が宮柱を立てて敬祀らば天下のため甘雨を降らし霖雨(長雨のこと)を止めむ」というご神教により創建され、雨師の明神、水神宗社として朝廷より厚く崇敬されたといいます。
祈雨には黒馬、止雨には白馬(または赤馬)が朝廷から献上され、神に祈るというのが慣わしだったそうです。しかし、毎回、馬を献上することが難しいということで、板に馬の絵を書いたものが代用されます。このことから、願掛けの習慣として絵馬が生まれたと言われていますね。
その後、水神に対する信仰は京都の貴船神社に受け継がれて行きますが、2011(平成23)年に起こった東日本大震災と紀伊半島大水害からの復興を祈り、翌年には約600年ぶりに「神馬献上祭」が復活。下社では白馬と黒馬が飼育されています。
人の力でどうしようもないことは、神様仏様にお願いするしかない。そういう点では、子供のころ、遠足や運動会の前日に「てるてる坊主、てる坊主、あした天気にしておくれ」と歌いながらてるてる坊主を吊すという行為も同じなのかもしれません。
さすがに、国家の一大事というわけではありませんが、子供にとって遠足や運動会が中止になるのも一大事。晴れたら金の鈴や甘いお酒を飲ましてあげるとてるてる坊主にお願いするものの、もし雨が降ったら首をチョンと切るぞと脅すという、恐ろしい歌を歌いながら…。
さすがに、国家の一大事というわけではありませんが、子供にとって遠足や運動会が中止になるのも一大事。晴れたら金の鈴や甘いお酒を飲ましてあげるとてるてる坊主にお願いするものの、もし雨が降ったら首をチョンと切るぞと脅すという、恐ろしい歌を歌いながら…。
話を元に戻し、冒頭でも記述したように出かける前に雨が降っていなくても、帰宅時間に雨が降る可能性があるなら、傘などの雨具を持ち、帰りの雨に備えることもできます。また、農業や漁業など特に天候によって左右される仕事はもちろん、外遊びの計画があるときも、前もって分かっていれば予定を変更することができますよね。このように天気を知ることで、生活がしやすくなるという利点があります。それだけでなく、早く異変に気付き、災害から自らの命を守るということにもつながるのではないでしょうか。
ライター:惣元美由紀
画像素材:PIXTA
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