愛される「京野菜」その美味しさを育んだ歴史をひもとく

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毎日の食卓から特別な日のごちそうまで、京都の料理に欠かせないもののひとつが京野菜です。京都らしいイメージを持つ京野菜は、近年では全国的にも多く流通するようになり、多くの人に愛されています。今回は、京野菜とはどんな野菜なのか、どんな歴史がありどんな努力で今に伝えられるようになったのかを紹介します。

「京野菜」とは?意外とあいまいなその定義

京野菜と聞くと、多くの人は水菜や賀茂なすなどの京都らしい野菜をイメージするでしょう。しかし、京野菜とは何かについてのはっきりとした定義は実はありません。

JA京都では、京都府下で生産されている野菜はすべて京野菜と位置付けているとのこと。この考え方に従うと、京都府下で生産されているトマト、ルッコラ、セロリ、ズッキーニなど京都らしいイメージがあまりない野菜もすべて「京野菜」になります。

そこで特に京都らしい野菜を決めようと始まったのが「京の伝統野菜」と「ブランド京野菜(京のブランド産品)」の認定制度です。

「京の伝統野菜」と「ブランド京野菜」

昭和63年、京都府農林水産部が「京の伝統野菜」の定義を以下のように定めました。

1. 明治以前から生産されているもの
2. 対象地域は京都府内全域
3. たけのこを含む
4. キノコやシダを除く
5. 栽培または保存されているもの及び絶滅した品種を含む

京の伝統野菜は、全部で37品目あります。中には、郡大根(こおりだいこん)や東寺蕪のような、絶滅してしまった品種も含まれています。

また、公益社団法人京のふるさと産品協会は「ブランド京野菜」を以下のように定めています。

京都らしいイメージがあり、安定した品質・企画で適正な出荷量が確保できる野菜。

万願寺とうがらしや、金時にんじん、やまのいもなど全部で20品目が指定されています。

京の伝統野菜であり、かつブランド京野菜でもある野菜もあります。水菜、賀茂なす、伏見とうがらし、万願寺とうがらし、鹿ヶ谷かぼちゃ、えびいも、聖護院だいこんなど合計13品目の野菜がそれにあたります。

京野菜と聞いたときに思い浮かべる野菜のほとんどは、京の伝統野菜もしくはブランド京野菜として指定されている野菜でしょう。そこで以下では、京の伝統野菜もしくはブランド京野菜をまとめて「京野菜」と呼ぶことにします。

京都の歴史が育んだ京野菜

長い間都であった京都。京野菜の発展には、この歴史が大きく関わっています。

都であった京都には、各地から多くの人やもの、技術が集まりました。その中には、各地の名産の野菜もありました。

京野菜のルーツを見てみると、京都以外の地域が原産の野菜もあります。ひょうたんのようなユニークな形の鹿ヶ谷かぼちゃは陸奥がルーツです。丸い形の聖護院だいこんは、尾張から持ち込まれました。いずれも、本来は普通の和かぼちゃやだいこんだったけれども、京都で栽培されるうちに今の独特の形に変化していったと言われています。

どうして、各地から持ち込まれた野菜が独特の変化をしていったのでしょうか。ここには、京都という町の風土が関係しているという説があります。

夏と冬、昼と夜の気温差が比較的大きい京都の気候は野菜の栽培に適しています。また、野菜の栽培に必要な良質な水も多く確保することができました。さらに、海が遠いことから食生活は野菜中心であったため、美味しい野菜に対するニーズも高い地域でした。

京都という地域が野菜の栽培に適していたこと、質の高い野菜のニーズにこたえられるよう生産者が努力を重ねていったこと。つまりはこの2つの理由から、独特の美味しい京野菜が生まれたというわけです。

ところが、戦後になって流通や農業が発展していくにつれて、京野菜は危機を迎えます。

病害虫に弱い、栽培にかかる期間が長い、通年で収穫できないため安定して作るのが難しい。京野菜にはこういった特徴があり、結果、一般的な野菜と比べて生産するのに手間がかかりがちです。生産する農家も少なくなり、絶滅する品種も出てきました。

そこで、もう一度京都らしい野菜をしっかり定義して、次世代に伝えていこうという動きが出てきました。京の伝統野菜やブランド京野菜の認定制度ができたのには、こういう背景があったのです。現在では、農家と行政が一体になり、京野菜の保存・継承に努めています。

美味しい京野菜を食べるには?

せっかく京都で食事をするなら、京野菜を使った料理を食べたい。そういうときにチェックをするといいのが、公益社団法人 京のふるさと産品協会が認定している「旬の京野菜提供店」です。

旬の京野菜提供店には、平成30年4月現在で京都府内193店舗、東京特別区内65店舗が認定されています。中には、日本料理はもちろん、おばんざいやフレンチ、イタリアンなど、気軽に利用することができる店舗も含まれています。

店舗のリストは京のふるさと産品協会のサイトで確認することができますので、京都で食事をするときには、旬の京野菜を味わえるお店に足を運んでみてはいかがでしょうか。京都の歴史と努力が育んだ美味しい京野菜をぜひ楽しんでみてください。
※参考サイト
JA京都
https://jakyoto.com/kyoyasai/
京都市情報館
https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000029058.html
京都の野菜 京野菜
http://kyoyasai.kyoto//
ブランド京野菜
https://www.pref.kyoto.jp/brand/brand_yasai.html

取材協力
京の食文化ミュージアムあじわい館
https://www.kyo-ajiwaikan.com/
食の語り部 民野摂子様
https://www.kyo-ajiwaikan.com/kataribe