何げない日常に潜む日本文化~迷信~

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何げない日常に潜む日本文化
~迷信~

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小学生のころ、指にささくれができていると、友人から「あ~、親不孝してるから」と言われたことがあります。今の方が確実に親不孝者だと思いますが、ささくれなんてひとつもできていません(笑)。そんなふうに根拠があるのかないのか、よくわからない迷信や言い伝えが日本にはたくさんあります。いくつか挙げていきたいと思います。

-縁起が悪い迷信

「三人で写真を撮ると真ん中の人が早死する」。筆者はなにげに信じていて、三人で写真を撮るときは真ん中を避けています。写真を撮られるのが嫌なときに「魂が抜かれる」と言うことがありますが、昔の人は写真を撮られると「魂が抜かれる」と信じていました。最初に写真機が登場した時代には、そっくりそのまままの姿が写し出されるわけですから、そう信じるのも理解ができますね。昔のカメラは真ん中の人にしかピントが合わず、その分魂が多く抜かれると思われていたそうです。
「霊柩車を見たら親指を隠す」。子供のころに霊柩車を見たら慌てて親指を手のひらの中に隠した経験がある人が多いと思います。いつの間にか習慣になっていて、大人になっても親指を隠す人もいるのではないでしょうか。筆者はもちろん習慣になっています(笑)。人は亡くなってしばらくの間は魂が漂っていると考えられており、その霊魂が親指の爪の間から出入りすると考えられ、亡くなった人の霊魂の侵入を防ぐために親指を隠したということだそうです。いつしか、親指が親と結びつき、親を守るために親指を隠すようになったとも言います。

-縁起の良い迷信・言い伝え

縁起の良い迷信は、実践している人が多いのではないでしょうか。「蛇の抜け殻を財布に入れるとお金が貯まる」や「初物を食べると七十五日長生きをする」などは、その例だと思います。蛇の抜け殻は、財宝・豊穣を司る弁財天様に由来すると言われ、蛇はその弁財天様の使いであることから同じ力が宿りと信じられて来たそうです。筆者も道端で見つけた蛇の抜け殻をボロボロになるまで財布に入れていました。
また、「初物を食べると七十五日長生きをする」という言い伝えは、江戸時代の死刑囚に由来すると言われ、この時代は最後に食べたいものを選べることが許されていたそうです。そこで、その死刑囚が季節はずれの食べ物を選んだことから七十五日生き延びたということです。そんなエピソードだったのですね。

-その他の迷信・言い伝え

「「食べてすぐ寝ると牛になる」「嘘をつくと閻魔さまに舌を抜かれる」「スイカの種を食べるとおへそから芽がでる」「雷がなるとへそを隠せ」など挙げるとキリがありません。
食べてすぐ寝ても牛になったことはありませんが、子供のころによく親に言われました。行儀が悪いということからだと思いますが、逆流性食道炎の原因にもなるので、確かにすぐ横になるのは避けたほうが良さそうです。
「嘘をつくと閻魔さまに舌を抜かれる」と言いますが、舌を抜かれるのは閻魔様の判決が降り、地獄に落ちてからです。そもそも閻魔様は裁判官であり、舌は抜きません。と言ってしまうとオシマイなのですが、嘘をつくのはいけないことであるという、子供への戒め。
そして、筆者が子供の頃に非常に不安な思いをした迷信が「スイカの種を食べるとおへそから芽がでる」。誤ってスイカの種を食べてしまい、毎日おへそを確認した記憶があります。スイカの種は胃で消化されず、胃腸に負担が大きいそうです。

このように、ひとつひとつ見ていくと、納得するモノが多いように思います。昔から長く言い伝えられている迷信や言い伝えは、適当な作り話ではなく、生活の中から作り上げた先人の知恵が詰まっているということ。由来などを知ると日本の文化や歴史を知ることができるというのもおもしろいです。また、現在にも通じるものもたくさんあり、迷信だとわかりながらも大人になってからも行動をためらうことも多々あったりと、私たちの生活の一部に確実に浸透しています。
ライター:惣元美由紀
画像素材:PIXTA