日本文化を探る
~日本のサクラ~
3月も中旬を過ぎると、毎日伝えられるサクラの開花状況を聞きながら「来週末には満開かな」とワクワクとした気持ちになります。今年(2021)は、2月から3月にかけての気温が高かったこともあり、観測史上最も早く開花を迎える所が多かったようですね。
気象庁によると、開花の基準となる標本木は、全国に58本。東京は靖国神社、大阪は大阪城公園、京都は二条城にあり、北海道や沖縄などの広いところや離れ島があるところでは、数本あるそうです。樹種としては原則「ソメイヨシノ」ですが、北海道は低温で「ソメイヨシノ」が根付かないため「エゾヤマザクラ」、反対に沖縄は暖かいので「カンヒザクラ」が標本木になっているそうです。
気象庁によると、開花の基準となる標本木は、全国に58本。東京は靖国神社、大阪は大阪城公園、京都は二条城にあり、北海道や沖縄などの広いところや離れ島があるところでは、数本あるそうです。樹種としては原則「ソメイヨシノ」ですが、北海道は低温で「ソメイヨシノ」が根付かないため「エゾヤマザクラ」、反対に沖縄は暖かいので「カンヒザクラ」が標本木になっているそうです。
開花時期が新生活などのスタートと重なり、新たな気持ちにワクワク感を添えてくれるサクラ。昨年から続くコロナ禍で、従来の花見がなかなか行えないのが残念ですが、日本人はどうしてこんなにサクラを好むのでしょうか。見た目の愛らしさ、儚さ、散り際の潔さなど、理由はさまざまだと思うのですが、満開の時期が1週間ほどなので「見ておかなければ!」というのが一番の理由のような気もします。
日本人はいつからサクラ好きに?
日本人が大好きな「サクラ」ですが、奈良時代の花見といえば「梅」や「萩」でした。万葉集4500首のうち、梅を詠んだ歌は110首以上、サクラは40首ほどということからも、万葉人には梅の花人気が高かったことがわかります。平安時代に入って、サクラも楽しまれるようになりますが、江戸時代までは梅もサクラもあまり変わらない存在だったようです。
そんなサクラの存在が、劇的に変化したのが「染井吉野」の誕生だそうです。それまでの花見の対象といえば、野生種のサクラの代表・ヤマザクラ。ヤマザクラは花と一緒に赤い葉も開くのに対し、ソメイヨシノは花が咲いている間は葉がないのが特徴。そんな染井吉野に衝撃を受け、格別の存在になっていったというわけです。
ソメイヨシノの中にもいろんなサクラが存在!
さて、その染井吉野ですが、江戸時代末に人の手によって誕生したと考えられていて、母親はエドヒガン、父親はオオシマザクラの種間雑種で、全国に見られる染井吉野は、挿木や接木によってクローン増殖されたものになります。
母親がエドヒガン、父親がオオシマザクラ、その子供の総称がカタカナの「ソメイヨシノ」。私たちも同じ親から生まれても、姿形・性格が異なるように、種間雑種の「ソメイヨシノ」にも花びらの色や大きさが異なる子供が生まれるようで、漢字の「染井吉野」や「衣通姫(そとおりひめ)」「咲耶姫(さくやひめ)」「染井彼岸」「染井匂」などのたくさんの子供たちが存在するそうです。「ソメイヨシノ」の中にこんなに品種があるなんて驚きですが、変種や園芸品種を合わせるとなんとサクラの品種は300種以上あるんだそうです。
サクラで有名な吉野のサクラはソメイヨシノ?
「ソメイヨシノ」ですが、「ヨシノ」と付いていることから、吉野山(奈良県)のサクラかと思いきや、吉野山にあるサクラのほとんどは野生種のヤマザクラ。野生のサクラはほかにも「ソメイヨシノ」のお父さんでもある「オオシマザクラ」と母親のある「エドヒガン」、そして、「オオヤマザクラ」「カスミザクラ」「マメザクラ」「タカネザクラ」「チョウジザクラ」「ミヤマザクラ」、3年前に約100年ぶりの新種発見で話題となった「クマノザクラ」などがあります。ちなみにその100年前に発見されたのが、「ソメイヨシノ」のお父さんの「オオシマザクラ」。そして、その野生種の中で日本固有のサクラは「ヤマザクラ」「オオシマザクラ」「マメザクラ」「チョウジザクラ」「クマノザクラ」だそうです。
「花見といえばサクラ」と世に知らしめ(?)、盛大に行われた豊臣秀吉の「吉野の花見」も「醍醐の花見」もヤマザクラだったということですね。
「花見といえばサクラ」と世に知らしめ(?)、盛大に行われた豊臣秀吉の「吉野の花見」も「醍醐の花見」もヤマザクラだったということですね。
見るだけじゃないサクラ
サクラは見るだけでなく、化粧水やシャンプー、香水などサクラの香りを楽しめるコスメなどが登場します。春を感じられるサクラのコスメもいいですが、やっぱり筆者は「桜餅」。花より団子派です。この桜餅ですが、関西と関東では、形状が異なるのをご存知でしょうか。関西は道明寺粉(もち米を乾燥させ、粗めにひいたもので、大阪の道明寺で作られたためこのように呼ばれる)で餡を包んだ、お饅頭のような形状。ぶつぶつ&もちもちとした食感が特徴で「道明寺(餅)」と呼ばれています。一方、関東では小麦粉などの生地を薄く焼いた皮で餡を巻いた、クレープ状のもの。こちらは、1717年に向島長命寺門前で山本新六という人が考案し、売り出したことから「長命寺(餅)」と言われています。
どちらにも使われているのが、サクラの葉の塩漬け。塩漬けに使われるサクラの葉っぱは、八重桜。ちなみにソメイヨシノ葉っぱはおいしくないそうです。エリアにより「道明寺」なのか「長命寺」なのかということになりそうですが、それよりも餅を巻いているサクラの塩漬けを食べるか、食べないかが気になります。ちなみに筆者は、口の中がモソモソというか、葉っぱが口の中で残るので、いただかない派ですが、みなさんはいかがでしょうか?
ひと言で「サクラ」と言っても、野生種や変種、園芸品種を合わせると300以上。「ソメイヨシノ」と「ヤマザクラ」は見極められそうですが、そのほかは見極めるのが難しいそうですね。しかし、これだけの数の品種があること自体、日本人のサクラ好きを物語っているような気がします。来年は、従来どおりのお花見ができるといいですね。
ライター:惣元美由紀
画像素材:PIXTA
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