身近な日本文化を学ぶ 仏教における色の意味 ~今も残る色の意味を探る~

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仏教における色の意味 ~今も残る色の意味を探る~

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寺院で特別な行事を執り行われる際に、ご本堂の正面に五色の幕が取り付けられているのを見かけます。この五色の幕は「五正色幕(ごせいじきまく・ごしょうじきまく)」、「五大色幕(ごだいじきまく)」、「五間色幕(ごけんじきまく)」などと言われています。寺院より「緑・黄・赤・白・紫」や「緑・紫・白・赤・黄」と微妙に色の配置が異なるようですが、これは、古代中国で成立した陰陽五行説に基づくものだそうで、正式には、緑色は青色で、紫色は黒色となります。

陰陽五行説とは

さて、その陰陽五行説ですが、広辞苑によると「古代中国に起源をもつ哲理。一切の万物は陰・陽二気によって生じ、五行中、木・火は陽に、金・水は陰に属し、土はその中間にあるとし、これらの消長によって天地の異変、災祥、人事の吉凶を説明する」とあります。

要するに、陰陽五行は古代中国で誕生した自然科学で、宇宙のすべてのものは「陰」と「陽」、すなわち、消極的なもの、積極的なものの相反する2つの要素(善悪ではない)と、「木・火・土・金・水」の5つの要素のかけ合わせで成り立っていて、その「陰」「陽」のバランスによって、天地の異変や、災いや幸福、人間社会の出来事、季節や方位など、すべてを説明できるということ。
その5つの要素である「木・火・土・金・水」を色で表すと「青・赤・黄・白・黒」になり、方角で表すと「東・南・中央・西・北」を示すそうです。
このような思想は、中国の儒教や仏教、道教に取り入れられていて日本にも当然影響を及ぼしているわけです。

その影響は寺院だけでなく、神社にも見られます。例えば、拝殿の中にある真榊や鈴などの威儀具にも青(緑)・赤・黄・白・黒(紫)の五色の絹が垂らされています。また、(伊勢の)神宮の遷宮において、最初に執り行われる神事「山口祭」(御用材の伐採と搬出の安全を祈る祭り)でも、五色の弊(幡)が用いられ、祭場を清めるために黄色の弊を中心に青・赤・白・黒の弊が四隅に立てられます。

仏教では一般的にお釈迦様の体や教えの象徴として解釈

仏教の話に戻り、その五色ですが一般的に仏教では仏陀(お釈迦様)の体や教えとして解釈をしているそうで、青は、仏陀の髪の毛の色で、心乱れず力強く生き抜く力「定根(じょうこん)」、黄は燦然と輝く仏陀の身体で、豊かな姿で確固とした揺ぎない性質「金剛(こんごう)」、赤は仏陀の血液の色で、大いなる慈悲の心で人々を救済することが止まることのない働き「精進」、白は仏陀の歯、清純な心で諸々の悪業や煩悩の苦しみを清める「清浄」、そして、黒は聖なる身体を包む袈裟の色で、あらゆる侮辱や迫害、誘惑などによく耐え怒らぬ「忍辱(にんにく)」を表しているそうです。

ただ、「全日本仏教会」のホームページによると「小部経典」という経の中の「無礙解道(むげげどう)」に、仏陀がその優れた力を働かせる時、仏陀の体から青、黄、赤、白、樺(赤みのある橙色)、および輝きの六色の光を放つとあることから、世界仏教徒会議で決められた正式な国際仏旗には、黒の代わりに樺色が使われています。
確かに、タイやインド、ビルマなどのお坊さんが身に付けている袈裟は、黒ではなく橙の袈裟なので、こちらの配色のほうが納得という感じでしょうか。
5つの色は仏教の寺院であることを示し、お釈迦様の教えを伝えているということがわかります。

寺院や神社以外でも使われている五色

これらの配色は、寺院や神社のほかであまり見かけることはない…。いえいえ、意外と身近で私たちは見ています。例えば、鯉のぼりの吹流し。成長していく子供に魔が寄らないようにと魔除けの意味で五色が使われています。

ほかにも、七夕の短冊。「♪五色の短冊~」という歌詞のどおり、願いごとを書いて笹の葉に吊るす短冊も五色。それぞれの色に意味があり、願い事の内容にあった色を選ぶことで叶いやすくなるそうです。

また、相撲の土俵の四隅にも東に青(緑)、南に赤、西に白、北に黒の房が下がっています。黄色はどこにということですが、先に述べたように土は中間。そのまま土俵というわけですね。
この五色はものに限らず、「青春」「朱夏」「白秋」「玄冬」と季節を表現する言葉にも使われています。また、黄色がありませんね。黄色は季節の変わり目を示す「土用」だそうです。こうして見て見ると身近なところで五色が使われていることに気付かされます。五色は仏様の教えであったり、神聖な場所を示したり、魔除けのほか、願い事を叶えてくれたりと、さまざまな意味を持っているようです。お寺も神社も、行事も色の意味を考えながら見ると、いつもと違った景色になりますね。ぜひ、身近にある五色を探して見てください。五味五色とか…。
ライター:惣元美由紀
画像素材:PIXTA