歳時記シリーズ 6月編

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歳時記シリーズ 6月編

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日本には古くから受け継がれてきた行事や慣習が月ごとにあります。私たちの暮らしを彩るさまざまな年中行事や慣習も時代と共に形を変えて残っているものもあれば、姿を消してしまったものもあります。「歳時記シリーズ」では、毎月、和風月名と身近な行事や慣習について調べていきます。

-歳時記とは

「歳時記」は「歳事記」とも書くそうで書物のこと。「歳時記」は、俳句の季語を集めたものだと思っていましたが、昔は、年中行事や季節ごとの植物や動物、生活の諸注意などが書かれた暮らしの百科事典のようなものだったそうです。

-6月の和風月名は「水無月(みなづき)」

6月は梅雨時期なのに、なぜ「水が無い月」なのかと思っている人も多いのではないでしょうか。実は「無(な)」は、「無い」という意味ではなく、連体助詞の「の」の意味合いで使われているので、実は「水の月」だという説があります。「無」が連体助詞なら、「神無月(かんなづき)」も「神の月」になるということですね。なるほど。
しかし、筆者はどこかで、旧暦の6月は田んぼに水を引くため、周辺の水が無くなってしまうから「水が無い月」というのを聞いたことがあります。調べてみると、そういう説もあるそうです。どちらにしても、田植え、農作に深く関係しているということですね。
6月はほかにも、水張月(みずはりづき)、鳴神月・鳴雷月(なるかみづき)などがあります。
筆者は「水無月」と聞くと、いつも和菓子が最初に頭に浮かびます。

-6月といえば「衣替え」

6月が近くなると「衣替え」の時期だなと思うのですが、今年は暖かかったので5月に入り早々に冬服を片付けてしまいました。朝晩が冷え込む日もありましたが、もうそこは我慢です(笑)。「衣替え」は一般的に6月1日と10月1日で、これは古来の風習や衣類の歴史が関わっているそうです。

-「衣替え」の由来は中国で、江戸時代に制度化!?

旧暦の4月と10月に中国の宮廷で春と秋に夏服と冬服を入れ替えていたことから始まった風習で、日本では平安時代に宮中行事として取り入れられたそうです。当初は貴族だけの行事で、年に2回夏装束と冬装束を入れ替えるだけだったそうですが、江戸時代になると、幕府によって年に4回と制定されたそうです。幕府に使える武家の着物(制服?)が、下にある期間で決められていたというのが理由です。
陰暦4月1日~5月4日 袷(あわせ)…裏地の付いた着物
陰暦5月5日~8月末 帷子(かたびら)…裏地なしの着物
陰暦9月1日~9月8日 袷(あわせ)
陰暦9月9日~3月末 綿入れ…生地の間に綿を入れた着物
武家だけの規則だったようですが、次第に一般庶民にも浸透し、習慣として広がったそうです。この決まりは今でも和服では重要視されています。そういえば、筆者の母も微妙な時期になると、「もう単衣(ひとえ)でいいかな? まだ袷かな?」と悩んでいる姿を時々見ます。この決まりを教えてあげれば解決しますね。
そして、明治に入り、新暦に切り替わると、夏服は6月1日~9月末、冬服は10月1日~5月31日となり、学校や官公庁、制服のある会社などでは、現在もこの日をめどに衣替えが行われています。
官公庁に勤めているわけでもなく、制服のある会社でもない筆者。自宅の前を通る学生を見て「衣替えの時期か」と感じています。今年は早めに冬服と夏服を入れ替えましたが、「衣替え」をすると気分も入れ替わった感じがしていいですね。
ライター:惣元美由紀
画像素材:PIXTA