歳時記シリーズ 1月編

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歳時記シリーズ 1月編

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日本には古くから受け継がれてきた行事や慣習が月ごとにあります。私たちの暮らしを彩るさまざまな年中行事や慣習も時代と共に形を変えて残っているものもあれば、姿を消してしまったものもあります。「歳時記シリーズ」では、毎月、和風月名と身近な行事や慣習について調べていきます。

-歳時記とは

「歳時記」は「歳事記」とも書くそうで書物のこと。「歳時記」は、俳句の季語を集めたものだと思っていましたが、昔は、年中行事や季節ごとの植物や動物、生活の諸注意などが書かれた暮らしの百科事典のようなものだったそうです。

-1月の和風月名は「睦月」

お正月に家族や親戚がそろい、仲良く過ごすことから「相睦び月(あいむつびつき)」「睦び月(むつびつき)」と呼ばれ、やがて「睦月(むつき)」というようになったと言います。ほかにも「寅月(いんげつ)」「元月(げんげつ・もとつき)」「霞初月(かすみそめづき)」「太郎月」など多くの異名があります。
お正月は、離れて暮らしている家族や親戚などが集まる特別な日。「睦月」はそんな様子を表した月名なんですね。最近ではメールで新年のご挨拶をすることが多いかもしれませんが、意外とお正月ってすることがなく時間があるので、直接伺いご挨拶するというのもいいかもしれません。

-1月の伝統行事と言えば「左義長」

1月はお正月や人日の節句(七草粥を食べ、お正月で疲れた胃を休め、邪気をはらい1年の無病息災を願う)、鏡開き、成人式など多くの行事がありますが、今回取り上げるのは、左義長(さぎちょう)。左義長とは、小正月(15日ごろ)に行われる火祭り行事のことで、地域によって、とんど、どんど焼き、さいとう焼き、鬼火焚き、さいのかみ(歳の神、塞の神、才の神)まつりなどさまざまな呼び方があります。

-「左義長」の由来

諸説あるそうですが、もともとは平安時代に宮中の清涼殿の東庭で、正月に使った毬杖(ぎっちょう)を3本結び立て、扇子や短冊、書き初めなどをのせ青竹で焼いたことが始まりとされています。毬杖とは、槌がついた木製の杖で、木製の毬を相手の陣地に打ち込む遊び、または、その杖のことだそうです。

-「左義長」とは

一般的には、お正月飾りや注連縄、書き初めなどを焼き、お正月に各家庭でお迎えした年神様を炎とともに天にお送りするという意味合いもあるそうです。また、その火で焼いた餅や団子を食べると無病息災で1年を過ごせる。若返る。書き初めを燃やすことからその紙が天高く舞い上がると習字がうまくなるとも、学力が向上するとも言われています。
筆者が小学生のころ、友人が「今日はとんどだから」と嬉しそうに帰っていく姿を見送ったことがあります。あれは、きっとお餅が振舞われるからだったんだと今になって思います。

-「左義長」はどこで

場所は様々で田んぼの真ん中でするところもあれば、神社や寺院の境内で行われるところもあります。神奈川県大磯町の左義長(国指定の重要無形民俗文化財)、富山県下新川郡入善町の塞の神まつり(国の重要無形民俗文化財)、3月に開催されますが織田信長の時代から続く滋賀県近江八幡市の左義長まつり(国選択重要無形民俗文化財)などは有名ですが、全国各地でさまざまな左義長まつりや、とんど焼きが行われます。

「左義長」「とんど焼き」によって年神様を見送れば、お正月行事も無事に終了というわけです。近くでとんど焼きが行われていれば、無病息災を祈願しに行ってみるのはいかがでしょうか。筆者も以前から行ってみたいと思っている大とんどがいくつかありますので、若返りたいと思います。
最近では、取りやめる地域も増え、東京ではほとんど行われていないそうですが、地域の結束をも強くする「左義長」「とんど焼き」のような伝統行事は、ぜひ残しておきたいものです。
ライター:惣元美由紀
画像素材:PIXTA