歳時記シリーズ 12月編

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歳時記シリーズ 12月編

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日本には古くから受け継がれてきた行事や慣習が月ごとにあります。私たちの暮らしを彩るさまざまな年中行事や慣習も時代と共に形を変えて残っているものもあれば、姿を消してしまったものもあります。「歳時記シリーズ」では、毎月、和風月名と身近な行事や慣習について調べていきます。

-歳時記とは

「歳時記」は「歳事記」とも書くそうで書物のこと。「歳時記」は、俳句の季語を集めたものだと思っていましたが、昔は、年中行事や季節ごとの植物や動物、生活の諸注意などが書かれた暮らしの百科事典のようなものだったそうです。

-12月の和風月名は「師走」

1年のうちで最も耳にする和風月名が「師走(しわす・しはす)」ではないでしょうか。「師走」とは、旧暦の12月を指す月名で、その語源の由来に関しては諸説あるようです。
「師=お坊さん」が、年末は各家庭で経をあげるために忙しく走り回るからという説や、「古事記」「日本書記」に「十有二月」の記述があり、当時から「しはす」と呼んでいたのを、後に「師走」という当て字で表記したという説。また、1年の最後の年という意味で「年が果てる」が「年果つ(としはつ)」→「しはつ」→「しはす」→「しわす」になったという説です。
筆者は12月になると「この間、お正月だったのに、もう12月。年頭に立てた目標は、結局、何ひとつ達成できなかった」と、毎年、自身のズボラさを反省し、あと1か月ではどうにもならないので「来年こそは頑張るぞ!」と、毎年鬼に笑われながら決意を新たにする時期でもあります。さて、皆さんはいかがでしょうか。

-「12月」の伝統行事と言えば「餅つき」

筆者の町内会では、12月に入ると杵と臼を使った「餅つき大会」が公園で行われ、小さな子供たちも杵を持って餅つきに参加します。そして、実家では毎年12月28日に「餅つき」をします。昔から母が「餅つき」は28日と言うので、深く考えることなくその日に「餅つき」をするのですが(餅つきと言っても電動餅つき機です)、なぜ28日に「餅つき」をし、お正月には鏡餅が必要なのでしょうか。

-年末に「餅つき」をする理由

お正月に飾る「鏡餅」を作ることが理由です。鏡餅や門松、注連縄などのお正月飾りは、“年神様(正月様、歳徳様とも)”を迎えるためのもので、新しい年に豊かな実りをもたらしてくれる神様がいらっしゃるという、古くからの信仰に基づくものだそうです。つまり、お迎えする年神様の依り代、神様の居場所となるのが「鏡餅」なのです。だから、銅鏡のように丸いのですね。
また、年神様は、私たちに新しい年に豊かな実り(幸福)をもたらしてくれると共に「魂(生きる力)」を分けてくださると考えられています。年神様の「魂」が宿った鏡餅の餅玉をお雑煮などで食べることで「生きる力」を分けてもらうという意味合いもあるそうです。
ちなみに、その年の魂(=餅玉)を家長が家族に分け与えた「御年魂」「御年玉」というのが、お年玉のルーツです。現在はお金に変わってしまいましたが、鏡餅をお雑煮やぜんざいにして食べるのは、その名残だそうです。

-「餅つき」をするのに最適な日は12月28日か30日

お正月飾りを大晦日に行うのは一夜飾りと言われ、神様を迎えするのに失礼にあたると考えたようです。「餅つき」も縁起を担ぎ、12月28日や30日に行うことになったそう。29日は「二重苦」「苦持ち」「苦をつく」と言って、「九」が「苦」に通ずることから縁起が悪いとされています。場所によっては、29日は「ふく=福」をもたらすと解釈するところもあるようです。また、31日につくのも一夜餅と言い、縁起が悪いと避けられています。以上のことから「鏡餅」などのお正月飾りは、28日か30日に飾るのが一般的だそうです。

最近では、餅つきをしなくてもスーパーなどでパックに入った「鏡餅」を購入することができます。気分的に自宅でついたお餅のほうが、縁起が良い気もしますが、江戸時代ごろから業者にお願いすることがあったそうなので、こだわる必要もなさそうです。気持ちを新たにし、年神様をお迎えするという気持ちが大切だということですね。年末に「鏡餅」を飾ると、新しい年が来るというワクワク感と共に、心なしか背筋がピンと伸びる感じもします。
ちなみに、もう一つの伝統行事に12月13日の「すす払い」「正月事始め」というのがあり、この頃から家中の大掃除を始め、お正月を迎える準備を始めます。12月は、お正月の準備に、クリスマス、忘年会に、年越し行事など、なにかと慌ただしい…。まさに「師走」という漢字がぴったりですね。
ライター:惣元美由紀
画像素材:PIXTA