日本文化を探る
何げない日常に潜む日本文化 ~婉曲な表現を好む日本人~
円滑な人間関係を保つために、昔から日本人は婉曲な表現を好んで使っていると言います。ひと言で「婉曲(えんきょく)」な表現と言っても“ピン”とこないかもしれませんが、実はほとんどの人が知らず知らずのうちに使っている表現方法なのです。
-「婉曲」とは
直接的な表現を避け、遠まわしに、または何かに例え、角が立たないような言い回し。相手にとって都合の悪いことを言う場合には、できるだけ自分に敵意が向かないようにする表現方法です。
-「婉曲」表現の背景
日本人は、昔から「和」を重んじてきました。これは、稲作(農耕)文化が関係していると言われています。農作業は一人ではできないので、調和が大切になります。また、日本は自然災害も多く、みんなが団結して困難に立ち向かわなければならなかった。みんなで力を合わせなければならないときに、誰かに命令口調で指示されると、ちょっとカチンときますよね。「和」を乱さないように、また、互いに傷つけ合わないように穏便に物事を進めるために編み出された表現が「婉曲」という話術だったのではないでしょうか。聖徳太子も十七条の憲法の冒頭で「和を以て貴しと為す(和を大事にすること)」と言っていますね。
-具体的な「婉曲」表現
私たちが普段使っている「婉曲」表現とは、どのようなものがあるでしょうか。
まず、ビジネスシーンでよく使うフレーズ。「恐れ入りますが」「お手数ですが」「申し訳ございませんが」などです。筆者も取材先に原稿内容の確認をお願いする時に使います。
これらは「クッション言葉」と言い、お願いする時や断る時など、次に来る言葉の衝撃をクッションのように柔らかくしてくれます。
まず、ビジネスシーンでよく使うフレーズ。「恐れ入りますが」「お手数ですが」「申し訳ございませんが」などです。筆者も取材先に原稿内容の確認をお願いする時に使います。
これらは「クッション言葉」と言い、お願いする時や断る時など、次に来る言葉の衝撃をクッションのように柔らかくしてくれます。
「クッション言葉」は、「ちょっと悪いんだけど、そこの醤油とってくれない」とか「せっかくなんだけど、今日はやめとく」など、親子間や友人同士の会話でも結構使っていますね。
ほかにも「婉曲」な表現として、結婚式では「終わる」は「お開き」、「ケーキを切る」は「ケーキ入刀」、「たまたま」は「偶然」というように、不幸や不吉なことを連想させる言葉や重ね言葉を他の言葉に置き換えます。
ほかにも「婉曲」な表現として、結婚式では「終わる」は「お開き」、「ケーキを切る」は「ケーキ入刀」、「たまたま」は「偶然」というように、不幸や不吉なことを連想させる言葉や重ね言葉を他の言葉に置き換えます。
ほかに「トイレ」のことを「洗面所」「化粧室」「お手洗い」。国鉄時代に生まれた言葉で、シートカバーがシルバーだったことから「シルバーシート」と名付けられ、そこから、お年寄りのことを「シルバー」と呼ぶようになったと言います。これらも「婉曲」表現のひとつです。
先日、今回のテーマ「婉曲」について話しているときに、夏目漱石の「月が綺麗ですね」という名言が出ました。夏目漱石が「I love you」を奥ゆかしい日本人の性格を考慮して、そう訳したそうです。その場にいた女子2名(筆者含む)の返しは「ふ~ん」。こういった粋なフレーズは、シチュエーションも大事ですが、恋愛に関しては真意が伝わらない場合がありそうです。
時代により言い方は変わったとしても日本人の相手を気遣い、礼儀を重んじる精神文化の現れが、「婉曲」という表現の中にあるように思います。
時代により言い方は変わったとしても日本人の相手を気遣い、礼儀を重んじる精神文化の現れが、「婉曲」という表現の中にあるように思います。
ライター:惣元美由紀
画像素材:PIXTA
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