特集「一隅を照らす」
令和6年11月10日(日)大般若転読会に参列
除災与楽を祈る大般若転読会が執り行われた毘沙門天の聖地・「本山寺」を訪れる
【2024年11月10日訪問】
山々に力強い祈りが響き渡る
『大般若経』とは、『大般若波羅蜜多経』(だいはんにゃはらみったきょう)のことで、唐の時代、西遊記の三蔵法師のモデルとして知られる玄奘三蔵が、自らが西域より持ち帰った膨大な量の般若経典群を翻訳しまとめた経典です。全部で600巻にもなる膨大な経典群として知られています。
古来よりこの『大般若経』を用いて祈りを捧げれば様々な功徳があるとされ、日本では大宝3年(703)に初めて『大般若経』を用いた法要が執り行われたそうです。しかしながら、全600巻もある『大般若経』をすべて読み上げるとなると、かなりの時間が必要になります。そこで、奈良時代頃から経典の名前や訳した人物の名前を読み上げる「転読」(てんどく)という方法が行われるようになったとされています。「転読」がはじまった奈良時代、経典は巻物として保管されていました。そこで法要では巻物を開き、「転」がして「読」んでいたことから「転読」と呼ばれるようになったといいます。
時は流れ、経典は巻物ではなく現在の御朱印帳のような折本で保管されるようになりました。折本では経典を「転」がして「読」むことはできません。それでは、どのように「転読」を行っているのでしょうか。
法要の後、参拝者に向けてご住職からこの意味についてお話がありました。
「まず経典を高く持ち上げて転読する意味についてです。このように経典をダイナミックに転読することで風が生まれます。その生まれた風に乗り経典に記された内容が参拝者のみなさまに届くとされています。」
「そして、読み終えた最後に机にバンと経典を叩きつけます。こちらは経典を食べてしまう虫を追い出すという意味があります。このように力強く叩きつけることにより虫を取り除き、経典を未来へ伝えるという意味が隠されています。また、先ほどの転読に関しても、風通しを行うことで防虫効果が期待できるという側面もあるようです。」
ご本尊さまの前で経典が空中に舞うその力強い光景は、身に降りかかる様々な災いから守ってくれると感じさせる素晴らしいものでした。
再発見された貴重な毘沙門天曼荼羅
その名も『毘沙門天曼荼羅』。毘沙門天を中心に毘沙門天に連なる様々な眷属の姿を三幅の掛け軸に描いた曼荼羅です。中央の掛け軸には、宝塔を左手に持ち右手に檄(げき)を持つ毘沙門天を中心に、龍王や説法使者の姿が描かれています。左右の掛け軸には毘沙門天につかえる八大夜叉大将や二十八使者の姿が彩り豊かに描かれています。また表装には、桂昌院ゆかりの家紋・九目結紋が使われております。
「毘沙門天曼荼羅は多く伝えられておりますが、こちらの毘沙門天曼荼羅の珍しい点があります。それは、三幅に分けて曼荼羅が描かれていることになります。三幅に分けて描かれていることから、現在伝えられている他の毘沙門天曼荼羅とは諸尊の配置の仕方が異なっているようです。この曼荼羅にどのような祈りが込められているのか、どのような歴史が秘められているのか今後に期待しています。」
法要のために日本全国から本山寺に人々が集う
大阪府高槻市原3298
大般若転読会
あわせて読みたい
-
令和6年10月5日 ~ 10月30日(前期)(令和6年11月2日 ~ 12月1日(後期))
世界文化遺産登録30周年記念展「比叡山と平安京」(前期)が開催されている国宝殿を訪ねる -
令和6年5月18日(土)(春季企画展 令和6年4月20日~6月17日)
比叡山延暦寺国宝殿・春季企画展「延暦寺の宝物を守り伝える-修理・保存・継承-」特別見学 -
令和6年1月22日(月)(特別展令和6年1月23日~4月14日)
東京国立博物館・建立900年 特別展「中尊寺金色堂」内覧会にお伺いしました -
令和5年特別公開
曼殊院、再建された宸殿と国宝・黄不動を訪ねる -
令和5年7月1日(土)~9月30日(土)
書寫山圓教寺で90年ぶりに四天王像が魔尼殿よりもとの大講堂へ(簡・繁翻訳有) -
宮崎県の善正寺、王楽寺、萬福寺を映像でご紹介
お寺巡りプロジェクト(宮崎県の寺院を巡る) -
京都大原にある三千院門跡、勝林院、来迎院を映像でご紹介
お寺巡りプロジェクト(京都大原の寺院を巡る) -
比叡山の麓、京都市の赤山禅院と大津市の東光寺を映像でご紹介
お寺巡りプロジェクト(比叡山麓の寺院を巡る) -
岡山県のご寺院 常住寺・金山寺・餘慶寺を映像でご紹介
お寺巡りプロジェクト(岡山県) -
伝教大師最澄1200年魅力交流委員会委員 京都府知事
西脇隆俊さん -
栃木県にある名刹、輪王寺・大慈寺を映像でご紹介
お寺巡りプロジェクト(栃木県) -
源頼朝公や徳川家に愛された静岡県・愛知県の寺院を映像でご紹介
お寺巡りプロジェクト(静岡県・愛知県) -
伝教大師最澄の東国巡礼の足跡を辿る 群馬県の寺院を映像でご紹介
お寺巡りプロジェクト(群馬県) -
令和4年9月3日(土)~12月4日(日)
聖徳太子ゆかりの「椿堂」特別御開扉 -
奥州藤原氏の遺産、岩手 平泉 中尊寺・毛越寺を映像でご紹介
お寺巡りプロジェクト(岩手県) -
京都 三十三間堂を映像でご紹介
国宝「三十三間堂」を巡る -
伝教大師御影供を映像でご紹介
伝教大師御影供 -
信州にある名刹、善光寺・大法寺・北向観音堂・光前寺を映像でご紹介
お寺巡りプロジェクト(長野県) -
大分県国東半島宇佐地域「六郷満山」の5つの寺院を映像でご紹介
お寺巡りプロジェクト(大分県・六郷満山) -
東北を代表する名刹である立石寺をはじめ山形にある4つの寺院を映像でご紹介
お寺巡りプロジェクト(山形県) -
「伝教大師1200年大遠忌記念 特別展『最澄と天台宗のすべて』」の様子を映像でご紹介(東京国立博物館平成館/令和3年10月11日内覧会訪問)
特別展「最澄と天台宗のすべて」を訪ねる -
比叡山親善大使
森友嵐士さん -
伝教大師最澄1200年魅力交流委員会委員 京都市長
門川大作さん -
音楽の力で元気を届けたい
ジャー・パンファンさん 小柳ゆきさん -
伝教大師最澄1200年魅力交流委員会副委員長 滋賀県知事
三日月大造さん -
伝教大師最澄1200年魅力交流委員会委員長 サントリーホールディングス株式会社 代表取締役副会長
鳥井 信吾さん -
伝教大師最澄1200年魅力交流委員会委員 武者小路千家第15代家元後嗣
千 宗屋さん