伝教大師最澄1200年魅力交流委員会副委員長 滋賀県知事 三日月大造さん
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いろり端

特集「一隅を照らす」

伝教大師最澄1200年魅力交流委員会副委員長
滋賀県知事

三日月大造さん

三日月滋賀県知事には、ご多忙のなか貴重なお時間をいただき、大学コラボプロジェクトの代表3名が知事室を訪問、待望のインタビューが実現しました。
大学生たちはインタビューに先立ち、「伝教大師最澄1200年魅力交流委員会」の副委員長でもある三日月滋賀県知事に、今日までの約10か月間でたくさんのワーキングを積み重ねてきたこと、大津・比叡山・坂本等の視察や訪問で様々な出会いや発見があったこと等の活動について報告しました。

Q.2019年5月14日に行われた「伝教大師最澄1200年魅力交流委員会設立会」において、最澄の思いを次の世代に引き継いでいきたいとおっしゃっていたと思いますが、大学生や次の世代に期待されていることをお聞かせください。

私は今、このようにみなさんと時間、空間を共有し、お茶を飲みながらゆっくりと話ができている。また、みなさんは大学に通いながら「伝教大師最澄1200年魅力交流」の活動を行う事ができている。いろんなテーマを与えられて勉強することができる。卒業できるかなと不安に思うこともあるかもしれないけれど、より充実したキャンパスライフを送ることができる。これらは当たり前のように思っているかと思います。
しかし10年後、さらには、私たちの子供や孫たちの時代もこういうことがずっと続くかというとそうじゃない状況が来るかもしれない。今、私たちが豊かで幸せだとすれば、それをより多くの方々に広げ、未来へ継続し、持続の可能性をみなさんとも一緒に取り組んでいきたいと思っています。
豊かな未来に向けて困難がある中でも、広げていくこと、続けていくこと。これらの知恵は、1200年続いてきた比叡山延暦寺の中にもあるのではないでしょうか。その教えの中で非常に大事なもののひとつが「一隅を照らそう」という、置かれた場所で最善を尽くそうではないかということです。
あと、私が大事にしているのが「山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)」という言葉です。山も川も草も木もみな仏であるという捉え方。滋賀県の人は、暮らしの中でとてもお地蔵さんを大事にしています。このようなことは次の世代にしっかりと繋げていけたらとも思います。そのようなことも含め、1200年の節目に一人でも多くの方に「一緒にしよう」と思っていただき、広がっていけばいいと思います。

Q.国指定文化財保有数全国第4位の滋賀県として、文化を伝承するために行っていきたいことや行っていること、独自の取り組みをお聞かせください。

たくさんの文化財が私たちの身の回りにあり、そのありがたさや尊さをもしかして十分に認識できていないのかもしれません。今、滋賀県として力を入れていることは、観光やメディアなどを通じて、滋賀の文化・文化財の再発見、価値の再認識をしてもらおうということを一生懸命やっています。
学校で学習していただくことはもちろん、地域の生涯学習を通して勉強していくきっかけもたくさん作っていきますし、先日、話題になった「ブラタモリ」をはじめ、現在放送中の信楽を舞台にした朝の連続小説「スカーレット」、2020年からスタートする戦国武将・明智光秀公を主人公とした大河ドラマ「麒麟がくる」など、外から来られた方、観光で来られた方の目を通して光を当てていただき、信楽や坂本、比叡山延暦寺などをもう一度見直してもらうということも大切です。
また、時代に合ったということであれば、インスタグラムなどのSNSを通して、滋賀をみんなに知ってもらうという方法もその中のひとつです。

Q.伝教大師最澄1200年魅力交流に対して、滋賀県としての取り組みがあればお聞かせください。

「豊かな森林資源があって本当の山になる。誰も入らない山は単なる山で、そこに人が入り憩えるからこそ、信仰の対象としての山がある」と比叡山延暦寺の森川宏映天台座主がよくおっしゃるのですが、私もその通りだと思っています。滋賀県の6分の1は琵琶湖、滋賀県の2分の1は森林なんです。今、改めて山を見直して、山を元気にすることにより、琵琶湖はもちろん自然がさらに豊かになります。たくさん木があり、ちょうど切りごろなのですが、切る人がいない。切っても安いという問題もあるので、木を使って家を建てようとか、保育所をつくろうなど県産財を使い、山の生業をもう一度元気にしようという仕組みを実施しています。
また、2021年「伝教大師最澄遷化1200年」の年に、滋賀県で「全国植樹祭」が開催されます。みなさんと木を植えて育て、育ったものを切って使うという循環の仕組みを改めて全国に、そして世界に発信したいとも考えています。木を育てることは時間がかかるのですが、これを継続する力、一朝一夕にならないことに取組む意味、そういうことをみなさんに感じてもらえたらと思います。
「千里の道も一歩から」「大河の水も一滴から」というように、ひとつひとつの取り組みが大事なんだと思います。

Q.「一隅を照らす」への思いと好きな言葉をお聞かせください。

中学生のときに先生から言われた「着眼大局 着手小局」という言葉を今でも大切にしています。これは囲碁の言葉で、碁盤を俯瞰的に見て全体を把握し、小さなことにも細心の注意を払って一手を置くという意味です。現在、知事として大きな目標を掲げないといけないこともあるのですが、職員一人一人が手がける仕事も大事にしなければならないということに通じますね。まさに「一隅を照らす」という伝教大師最澄の言葉にも通じるところがあるのではないでしょうか。
<取材を終えて(参加学生より)>
かなり緊張してインタビューにのぞんだので、声がかれてしまったメンバーもいましたが(笑)三日月知事に、今年の2月22日~24日に、3日だけ実際に大津市坂本の住人となる企画「3日間で1200年」についてお話しました。その時期は寒いよ~とおっしゃられましたが、やはりその土地の良さはその地に住むことで見えてくるよともおっしゃっていただきました。自分たちからは「知事、ぜひ坂本でお待ちしております!」とお伝えしました(笑)
最後に、知事の好きな言葉を色紙にしたためていただき記念撮影。そろそろ失礼しようとしたときに、知事が知事室に戻られ、信楽焼の小さなカエルの置物をくださいました。
自分たちは今回の魅力交流の取組では、人と人が垣根を越えて話し語り合う機会を多くいただいてきました。今回のこの機会が少しでも豊かな未来につながる一歩になればいいなと思いました。

三日月知事 ありがとうございました!