
特集「一隅を照らす」
伝教大師最澄1200年魅力交流委員会委員
京都府知事
西脇隆俊さん
京都府の西脇知事にはお忙しい中時間を頂戴し、大学コラボプロジェクト参加学生と文化伝承について語り合っていただきました。
(令和5年2月1日 ご訪問)
文化の伝承と文化施設の役割

さらに、皆さんが訪問されている、社寺も非常に重要な文化施設です。京都の、日本の社寺は西洋の遺跡と違い外側が残っているだけじゃなくて、そこで今も営みが行われているというのが大きな特徴だと思います。

ちょっと飛躍しますが、文化伝承のために一番重要なことは実は多くの人に関心を持ってもらうことです。関心を持ってもらい、文化施設に足を運んでもらえれば、拝観料・入場料などで維持管理のための資源も生まれます。VRの技術を導入するなど、見せ方の工夫も必要です。
そのように、文化施設はトータルに運営、維持管理していく必要があるのではないかなと思います。それが文化の振興・発展につながっていく。ですから、文化施設って非常に重要ですね。

文化の現場に足を運んでもらうために

京都は「生活の中に文化が根付いている」と言われています。社寺だってそこで生活の営みが行われていますし、茶道・華道も単なるお稽古事じゃなくて、お祭りとか祭事と切っても切り離せないですよね。それから食とか和装とか、伝統産業も続いている。それを文化庁の人たちが京都の地で、地域の生活文化・地域文化により焦点を当てた政策立案をするんです。そういう素晴らしい地域文化は京都だけではなく全国にありますから、まずは京都から、全国に焦点を当てるような活動がなされることにおいては、移転の意義がありますね。
それから、広報という意味においてのいい例ですが、国際会議や学会を京都で開催すると参加人数がとても多くなるそうです。これは岸田総理も明確におっしゃっておられますが「京都から日本文化を発信する」ことで発信にも厚みが出るし、多くの人を巻き込むことができる。ですから、京都、尚且つ社寺などを舞台にして、さまざまな文化の取り組み、営みを行うことによって、より取り上げられるとか、足を運ぶ人が多くなるなどまさに広報そのものですね。文化の発信の舞台としては京都というのは大きな意味を持っているし、それは京都のためだけではなく、日本全体の発信力の強化につなげる。それこそ、文化庁が京都にきたことの意義は発信という面においては非常にが大きいのではないかと思っています。

京都府域の文化の魅力

これは、一度でも足を運んでいただいた方には非常に実感してもらえると思います。天橋立で京都市内には5回も10回も訪れているという海外の方にインタビューしたところ、初めて天橋立を訪れた際に「どうしてもっと早く連れてきてくれなかったのか」と怒ってる(笑)。
今回のコロナの影響で近場への観光が見直されて、京都市内の人も含めて府域を訪れる人は増えています。「京都市内に行かないで」ではなくて、京都市内に来た方が、もう一泊、もうひと足延ばして府域を体感していただければ、と思っています。もちろん宿泊施設の整備などの課題はたくさんありますが、地道にやっていきます。それからインバウンドが京都市内に集中する、という問題を考えても、今後「分散」は非常に重要なキーワードになると思います。

持続可能な文化・観光政策


人々の生活と文化創出
(西脇知事)なかなか格調高い質問をして来られますね(笑)
例えば、京都には世界遺産に認定された社寺が複数あります。そのうち、金閣寺というのは一回焼失して再建されているので、実は遺跡ではなく新しいものだ、と言われたりもするわけです。でも、実は古さが評価されたわけじゃないのです。同じものを、もう一度作れる人材と技術と材料と、それがトータルで評価されました。やっぱり最終的には文化は「人」だと思います。


まあ、基本はやっぱり技術を人がどれだけ継承していけるのかということなので、やっぱり人材の育成が非常に重要です。文化伝承のためには失われちゃいけないものがあるわけですよね。けれど、今と同じやり方をずっと続けるわけじゃない。今はたくさん分業していますが、一人で複数の工程ができるようになるとか、いろんな新しい技術を使うとか、商慣習を見直すとか、どんどん工夫していく余地はあるのです。工夫することによって、引き継いでいくということです。
お忙しい中時間を頂戴できて本当によかったです。知名度が高く、国際会議などにおいては発信力が非常に強いということが印象に残りました。京都市中心部だけではなく、京都全域の文化・魅力を愛情持って語っておられ、楽しく感じました。観光においても、国際的な発信については京都がお手本ではないか、と考えていました。コロナ後大きく形を変えていく中で、「持続可能な観光」というお言葉が出てきて、また京都らしさを大切にされていくのだということを感じました。
知事は「人の営みも含めて文化」というようにおっしゃっておられましたが、「人々の生活の営みの中に文化の本質がある」ということを私たちもこの活動を通して強く感じてきましたので、そうした人々の生活の営みにも重点をおいた文化の発信を気を付けてやっていきたいと思いました。
改めて、「人づくり」というのが文化を伝えていくうえで大事なのだということを感じました。文化施設があると、どうしても文化が継承されている気になってしまうのですが、人の大切さを改めて強く感じることができました。
西脇知事 ありがとうございました!

インタビューの様子は映像でも公開しています
https://youtu.be/PITr3yKwrDg
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