いろり端
探訪「1200年の魅力交流」
寛永寺で最も早く建立された子院 「護国院大黒天」を訪ねる
東京都台東区に位置する「護国院大黒天」は、かつて東叡山寛永寺の三十六坊の一つで、寛永寺の中では最も早くできた子院の一つです。護国院は、寛永寺のお堂の一つである釈迦堂の管理を歴代任されており、現在は釈迦堂の本尊である釈迦如来、護国院の本尊である千手観音菩薩、徳川家光から賜った大黒天が同じ堂内に祀られています。護国院をご案内していただくと、地域に根差した明るく開けたお寺でした。今回は神田隆順執事長に護国院の歴史や地域との関わり等をお聞きしました。

護国院の歴史
「寛永寺は寛永二年(1925)に創建し、約400年を迎える寺院となります。上野公園全域が寛永寺だったという広大な敷地には、薬師如来を祀る根本中堂、阿弥陀如来を祀る阿弥陀堂等の様々なお堂が建てられていました。」
釈迦堂の御本尊「釈迦三尊像」
「堂内の正面には釈迦三尊像を祀っています。ご本尊は亨保3年(1717年)の火災から逃れ創建当初のものが残されており、春日仏匠の作であると伝わっております。寛永寺全体としてお釈迦さまの生まれた4月8日の花祭り、お釈迦様の亡くなられた2月15日の涅槃会の年2回は寛永寺一山住職が集まって法要をこの護国院で行っています。それ以外でも寛永寺内のそれぞれのお堂で法要を行ったり、将軍様の命日に法要を行ったり、御門主と寛永寺子院住職の19人と一山挙げでお勤めを行っています。」


護国院の本堂
「実は護国院は、もとは今とは異なる別の場所にありました。寛永寺は徳川幕府の菩提寺(先祖代々死後の冥福を祈ってもらうお寺)として開かれたのではなく、江戸城の鬼門の方角にあたるため鬼門封じの祈祷を行うために開かれました。」


徳川家光から賜った大黒天
「このお寺は大黒天もお祀りしています。護国院が大黒天もお祀りするようになったのには、徳川家と深い関わりがあります。大阪冬の陣・夏の陣が終わり、豊臣家が滅ぼされ、25年が絶ち江戸の世が安定し日本という国が安寧してきた寛永年間の終わり頃に、大きな戦により亡くなられた多くの方の供養を行いたいという風潮が高まり、寛永寺そして護国院として供養を行いたいと「念仏大回向」を奉修しました。その当時はまだ寛永寺としてお堂が整っていなかったため、その当時最も大きかったと思われるこの釈迦堂で生順僧正が敵味方関係なくご回向を行いました。そのことに感心された三代将軍徳川家光より褒美として寺領を寄進してくださるとのお話がきましたが、それを生順僧正はお断りされました。それならと家光自身が大切にしていた大黒天の画像をくださいました。」
「これは亡くなられた方々を供養するとともに、これから江戸や日本に住む方が豊かで幸せに暮らせるように願って欲しいという思いからでした。このことから大黒天も祀るようになりました。現在では大黒天は谷中七福神のうちの一つとなり、正月には多くの人々でにぎわいます。画像は大黒様の縁日である甲子日や毎月3日に御開帳しており、普段は木造の大黒天を拝んでいただいております。」

護国院の本尊「千手観音菩薩像」
「護国院という子院としての本尊は、千手観音になります。そのため、以前は釈迦堂というお堂とは別に護国院にも建物があり、護国院の内仏として千手観音が祀られていたのだと思います。それが移転や曳家を行ったとき等でお寺の建物の改築を行い、現在のようにお祀りされています。
他にもたくさんの仏像をお祀りしており、十二支の守り本尊が揃っています。以前は虚空蔵菩薩さんだけがおりませんでした。守り本尊を集めたわけではなかったので、たまたまいなかったのです。それではと信者さんがご寄進くださり全てが揃っています。」
他にもたくさんの仏像をお祀りしており、十二支の守り本尊が揃っています。以前は虚空蔵菩薩さんだけがおりませんでした。守り本尊を集めたわけではなかったので、たまたまいなかったのです。それではと信者さんがご寄進くださり全てが揃っています。」



参加大学生の感想
護国院大黒天という呼び名とともに釈迦堂という呼び名で呼ばれていることから、どのような寺院であるのか不思議に思っていたのですが、集まって現在の護国院があることを聞きました。現在は行われていないとのことでしたが、本堂には甲子講の講員の名簿等が飾られており、大勢の方の名前が記されていました。周りに住宅や学校がある中で、護国院は開かれ気軽に立ち寄りやすいように思いました。祖父の代から毎日お寺を開いており、お寺の中に入り内陣等まで自由に見てもらえるようにしているとおっしゃっていたことに驚きました。内陣に入ることは他の寺院ではあまり行っておらず、お寺にどのようなものがあるのかを知ることができる貴重な体験であると感じました。そのような体験がお寺という存在を身近に感じる一歩であると思います。毎日お寺を開けることは大変なことも多いと思います。しかしそれがあることにより、地域に根差しさまざまな人々に愛され、落ち着ける場所として護国院があるのだと感じました。
東叡山寛永寺 護國院
〒110-0007 東京都台東区上野公園10-18
〒110-0007 東京都台東区上野公園10-18

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地域で育まれてきた歴史や文化を語り合い、
新しい価値と出会います