最澄造像のご本尊を祀る「円興寺」を訪ねる
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いろり端

探訪「1200年の魅力交流」

最澄造像のご本尊を祀る「円興寺」を訪ねる

岐阜県大垣市に位置する円興寺は、東国を巡っている途中の伝教大師最澄によって、延暦九年(790)に開かれたと伝わっているお寺です。

この円興寺のご本尊「聖観音」は、お寺が創建されるときに伝教大師最澄が彫られたお像であると伝わっています。

今回特別に、非公開の木造聖観音像を見せていただきながら神藤誠真住職にお話しをお伺いいたしました。

また、弘法大師空海がこのお寺を訪れた際に、ご本尊の頭上(もしくはご本尊の胎内)に一寸八分の黄金仏を彫刻し安置されたと伝わっているそうです。
平安時代前期を代表する2人の祖師に関係があるお像を直接自分の目で見ることができたことに感動しました。最澄、そして空海が生きた時代は約1200年前で、簡単にその時代を想像し体感するが難しいですが、このお像を拝覧している間は、1200年前の時代の空気に触れた心地がしました。

このご本尊の右頬には大きな傷があります。これは、戦国時代に織田信長によって円興寺が焼き討ちされた際についた傷と伝えられています。また、焼き討ちの時にご本尊は遠く離れた谷間の石の上に難を避けたことから、「石上観音」と呼ばれているそうです。お像の姿をより美しくするためには、この傷を修復するほうが良いのかも知れません。しかしながら、この傷は、ご本尊が作られてから今日まで多くの人々が大切に守り伝えてきた証であり、この傷から先人達の思いや願いが垣間見えたような心地がしました。

円興寺は、源氏一族ともゆかりがあるそうです。円興寺がかつて存在した場所には、源頼朝公の兄である源朝長公のお墓があるそうです。また、本堂には源氏一族の位牌が大切に祀られていました。

円興寺を訪問し、伝教大師最澄が生きた時代から今日までの約1200年という壮大な歴史に思いを馳せることができました。今回訪問した円興寺さんのように、お寺はその土地の歴史を表わし、私たちがそれらを容易に触れることができる場所であり、普段の生活で気がつかないことを発見する場所であると思います。
みなさんも何気なく通っているお寺を訪問して、その土地の歴史を体感し、それぞれの魅力を見つけてみてはどうでしょうか。
篠尾山円興寺
〒503-2221 岐阜県大垣市青墓町5丁目880