いろり端
探訪「1200年の魅力交流」
日本最長を誇る「坂本ケーブル」を訪れて


観光や参拝者の多くは、終点のケーブル延暦寺駅に向かいますが、途中下車してみるのも一興です。「ほうらい丘」駅は、4つある坂本ケーブルの中でも一番新しい駅で、霊窟と一緒に設立されて、霊験あらたかなスポットとして注目されています。
現在では良縁をかなえてくださるというご利益が評判となり、わざわざ訪れる観光客がいるほど。比叡山とその周辺地域には、今でも数多くのお地蔵さんがたくさんあることから、この地では非常に親しみのある仏様といえそうです。


ケーブル乗車中に比叡山鉄道の久ノ坪宏司社長よりお話しをお伺いしました。

ターンアウトでは、線路は複線(レールは4本)になっていますが、元々線路は単線(レールは2本)です。上りも下りも単線です。なぜ、衝突せずにケーブルカーが、ターンアウトの位置でうまくすれ違うことができるのかというと、車輪の形状が違うことによります。この車両は写真のとおり、左にある車輪が溝型車輪、右側の車輪は平車輪になっています。そのため、ターンアウトでこの車両は溝型車輪がレールから外れないように左端レールに沿って左の線路を走行します。平車輪の方は、レールの上を転がっていくだけの役割をしています。
一方、相手方の車両は、反対に右側に溝型車輪(左側が平車輪)があるため右端のレールに沿って、必ず右側の線路を走行するわけです。

今回は特別にケーブルカーの心臓部にあたる「巻上室」を見学させて頂き、車両や巻上室の管理をされていらっしゃる中島利明さんと佐藤幹夫さんにお話しをお伺いしました。

車両の重量はおよそ12トンあり、お客さまに乗って頂くと、およそ15トンになります。下から引き上げる重量と、上から降りてくる重量は同じですから、それほど力はいらないということです。

車両には、車掌が乗車しており、車両の前方に障害物がないかどうか常に安全の確認をしています。ブレーキ作用は山上の原動機側で完結しますが、車両側にもブレーキ装置があり、緊急時には車掌が止めることも可能です。


もともとロープ自体は車両の最大重量の11倍の安全量をもっていますので切れる心配はありませんが、万が一という時のための安全装置として、レールを挟む機械的なブレーキも車両についています。昭和2年(1927年)の創業から今も受け継がれている技術です。
坂本ケーブルのご訪問を終えて

2027年に100周年を迎える坂本ケーブルは、徹底した安全管理で、今日も比叡山に欠かせない信仰と観光の縁の下の力持ちとして、地元のみならず観光客からも愛されていることを、改めて実感しました。
〒520-0116 大津市坂本本町4244
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