びわ湖百八霊場の一つ「眞迎寺」を訪ねる
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いろり端

探訪「1200年の魅力交流」

びわ湖百八霊場の一つ「眞迎寺」を訪ねる

 京都、大阪に次いで滋賀県にも多くの名刹があります。びわ湖を囲むように数珠状につながった巡礼路として、平成21年に誕生した「びわ湖百八霊場」は煩悩の数と同じ百八の寺院を巡ることで悩みを打消し、心に安らぎをもち、人間性を豊かにしてほしいとの願いが込められている霊場として人気があります。
 この霊場の第15番が「天台宗光明山眞迎寺」です。お話しをしていただいたのは、当寺の第39世住職辻井芳道さんです。

 最初に仰木の郷についてお話しを伺いました。この仰木は延暦年間に「伽太夫」という仙人が一村を開いたと伝えられています。当時、村には大きな松の木があり、宵の明星が梢を美しく照らし、その光景を村人たちが仰ぎ見たことから、また、比叡山横川の霊木を仰ぎ見たことから、この地名が起こったとも伝えられているとのことです。このように仰木の郷は横川の麓ということからして、古くから比叡山との関わりが深かったと言えます。

 眞迎寺は門をくぐると正面に本堂、右側に元三大師堂、そして左側に薬師堂があります。開基は、日本浄土教の始祖と言われ「往生要集」を著した恵心僧都であり、本堂の御本尊は恵心僧都の御作と言われている阿弥陀如来像がお祀りされています。本堂は新しく平成元年に新築されたとのことです。

 正面向かって右側の元三大師堂には、慈恵大師良源がお祀りされており、織田信長の比叡山焼き討ちの際に、比叡山の裏側に避難されていたのを第26世源潤住職が霊夢を感じてお迎えしたと言われています。

慈恵大師良源は荒廃していた比叡山の諸堂の復興や天台教学を盛んにするなど、多くの功績を残され「比叡山中興の祖」と言われ、第16世天台座主になられた方で、一般的には「おみくじ」の考案者として有名です。
 また「厄除け大師」として、現代に至るまで強い信仰を集めています。特に「角大師」のお札を家の戸口に貼ると、邪気は寄り付かず、疫病はもとより一切の厄災から逃れることができると言われ、慈恵大師良源ゆかりの寺院では、角大師のお札を人々に配布するようになり、現に仰木地区では宗派を問わず、多くの家の戸口に「厄除のお札」として貼られています。
 慈恵大師良源は正月の3日に入寂されたことから「元三大師」と呼ばれていますが、お生まれになったのは9月3日で、元三大師は多くのお寺でお祀りされており、眞迎寺の元三大師は、地域の人から「横川のお大師さん」に対して「仰木のお大師さん」と呼ばれています。毎年9月の第1土曜日に「御誕生会法要」、また2月の第1土曜日に「元三会法要」が営まれており、9月の御誕生会法要にはお蕎麦の接待、2月の元三会法要には大根焚きの接待があり、露天も出店し大変賑わっています。特に、2月の元三会法要には、1年間戸口に貼られていた「角大師」のお札を返却し、新しいお札を求めてお参りされる方が多くお見えになります。
 次に、正面向かって左側の薬師堂には恵心僧都の御作で、多田源氏の源満仲公の念持佛と言われている薬師如来をお祀りしています。眞迎寺の北東にある「御所の山」は源満仲公が10余年に亘り居館を構えた跡と言われています。源満仲公は恵心僧都と親交が深く、恵心僧都を戎師として出家、法名を満慶(まんけい)と号し、居館を寺として紫雲山来迎院満慶寺(しうんざんらいこういんまんけいじ)と称したと言われています。源満仲公は温厚な方で村人に大変愛されていましたが、今日で言う人事異動でしょうか、この仰木の土地を離れていく際に「どうか離れないで下さい、いつまでもこの土地にいて下さい」と村人が懇願したそうです。そのいわれが毎年5月3日に行われる仰木まつりの馬止めの儀式と言われています。

 最後に、飛地境内にある地蔵堂を紹介していただきました。
 ここには伝教大師最澄の御作で、国の重要文化財に指定されている延命地蔵尊がお祀りされています。辻井住職からお地蔵さまは街かどや田んぼのあぜ道など、どこにでもよく見かけますが、誰からも一番愛される佛さまです、とお話し下さいました。

 また、錫杖という杖を持って、この世でもあの世でも、どこにでも行って困っている人を助けて下さいます。地獄に落ちて苦しんでいる者もお地蔵さまが錫杖をカラカラと鳴らしてこられると、助けにきて下さったと喜んだそうです。

 お地蔵さまは子どもが大好きで、子どもたちをいつも守っていて下さいます。毎年8月のご縁日には自治会の協力を得て盛大に地蔵盆が行われており、年々子どもの数が少なくなってきている中で、当日はどこからか多くの子どもたちが集まってきて賑やかな地蔵盆となり「お地蔵さまもたいへん喜んで下さっていると思いますよ」と、辻井住職は目を細くして語って下さいました。

眞迎寺のご訪問を終えて

 辻井住職は「私には難しい法話はできませんが、わかりやすく話をし、気軽に接すれば必ず人はきてくれると思います」とお話しされたことが心に残りました。親しみやすいお寺、心のよりどころとしてのお寺、このことが、今、最も必要なのではないでしょうか。
光明山 眞迎寺
〒520-0247 滋賀県大津市仰木2-7-10