美しい紅葉と人々の笑顔にあふれる開創1300年以上の古刹「高蔵寺」を訪ねる
TOP > いろり端 > 兵庫県丹波篠山市 高蔵寺

いろり端

探訪「1200年の魅力交流」

美しい紅葉と人々の笑顔にあふれる開創1300年以上の古刹「高蔵寺」を訪ねる

2023年11月11日 訪問
黒豆で全国的に有名な丹波篠山市。その丹波篠山市に境内が紅葉に彩られたくさんの人々が訪れる「丹波篠山もみじ三山」と称される3つのお寺が伽藍を構えています。そのうちの1ヶ寺、高蔵寺に大学生達が訪問し、福井 邦彦ご住職に高蔵寺の歴史についてお話を伺いました。

創建1300年を越える古刹

大学生達が境内に到着すると、阿弥陀堂でちょうど法要が始まりました。阿弥陀堂に入ると、本堂に煌びやかな法衣を身につけた僧侶の方々が入ってきました。鐘が打ち鳴らされ、読経がはじまります。
早朝の雨でしっとりとした空気が漂う高蔵寺の境内に経典を読む声が30分ほど響き渡り、境内全体が一体となるような空気感が醸し出されました。

「この高蔵寺は、今からおよそ1300年前の大化2年(646)に開かれたと伝えられています。このお寺を開いたのは、法道仙人という方。現在の兵庫県を中心に活動された方で、同じ天台宗のお寺である一乗寺や播州清水寺を開いたことでも有名です。その法道仙人が一乗寺を開いた後、現在の高蔵寺がある場所を訪れました。その際、法道仙人は近くにある山・黒頭峯(くろづほう)に金銀に彩られたの雲の架け橋がかかっている光景をご覧になったそうです。そのことからこの地に宝橋山(ほうきょうざん)とするお寺を建て、そのお寺が高蔵寺となりました。」

「現在の高蔵寺は山の麓にありますが、昔は先程登場した黒頭峯の中腹にお寺はありました。往時は七堂伽藍をほこり、21ヶ坊から構成される大寺院であったと伝わります。しかしながら、この地は丹波。かの有名な明智光秀による丹波攻めが丹波地域を襲います。高蔵寺も例外ではなく、そのときにお寺の建物のほとんどを失ってしまったそうです。」

「丹波攻めだけでなく、たくさんの戦乱や自然災害に見舞われましたが、そのたびに高蔵寺は復興されてきました。今皆さんが座っているこちらは阿弥陀堂と言いまして、平成13年(2001)に建立されました。建立にあたり、檀家様や信者のみなさまにご協力いただき、このような立派な建物を建てることができました。いつの時代も高蔵寺を守ってくださる方々がいらっしゃることは非常にありがたいことです。」

「高蔵寺の歴史を簡単にですがお話ししました。それでは、戦乱を乗り越えて伝えられてきたご本尊様のもとへと歩みを進めましょう。」

大和・長谷寺のご本尊と同じ木から造立された秘仏・十一面観音

阿弥陀堂より歩みを進めて5分ほど。杉の大木に囲まれた堂々たるお堂が見えてきました。

「こちらの建物が高蔵寺の本堂になります。いま扉を開けますので、どうぞ中にお入りください。」

ご住職の案内で本堂の内部に足を踏み入れます。

「こちらの本堂は、今から300年ほど前の1714年に建立された建物になります。今皆さんが入ってきた扉の近くの空間が外陣、お像がおまつりされている空間が内陣といいます。外陣には立派な彫刻が施された欄間や江戸時代に描かれた大きな絵馬があるのでどうぞご覧ください。」

「内陣の中央、小さな建物のようなものが中央にありますね。こちらが厨子といいます。この厨子の中に、ご本尊である十一面観音菩薩像がおまつりされています。ご本尊様は秘仏であり、残念ながら33年に一度のタイミングでしかお姿を目にすることができません。最後に扉が開かれたのが2018年。ぜひ30年後にお参りください。そのとき皆さんとお会いできることを楽しみにしています。」

学生とご住職との会話が弾みます。

「ご本尊は、奈良県の長谷寺の大きな十一面観音様の末木で造立されたと伝わっています。当然彫った仏師も同じ方々。稽文会(けいもんえ)・稽首勲(けいしゅくん)という仏師達により造立されたそうです。」

「厨子の前には、お前立の十一面観音菩薩像がおまつりされています。近年修復をしたので、全身が金色に輝いています。お前立ち像というとあまり注目されない印象があると思いますが、こちらのお像は美しい立ち姿で人気があります。ぜひ近くで拝んでください。」

「本堂に続く階段の麓には、観音水と呼ばれる名水があります。非常に清らかで、飲めば美しくなれるというおいしい水です。この水をくみに来て料理に使っているお店もあります。そちらもお楽しみください。」

本堂に残る迫力ある彫刻、美しい十一面観音像、飲むと美しくなれるという観音水、思い思いに心引かれるところへ歩みを進める学生達。時が過ぎることを忘れ、ご住職との会話も非常に盛り上がりました。

「先程お話ししたとおり、高蔵寺は戦乱や天災に巻き込まれ往時の広大な伽藍を失ってしまいました。しかしながら、ご本尊様をはじめとするたくさんの仏像、絵画、建物などが守り伝えられています。昨年には、境内の入り口に建つ山門の大修理を行うことができました。また、少しずつですがたくさんの方々が楽しめるよう、境内の整備を続けています。本堂へと向かう参道沿いには比叡山よりいただいた紅葉を植えています。そうしたお寺の整備ができるのも、檀家の皆さんや信者の皆さんのご協力のおかげです。「丹波篠山もみじ三山」のお寺として、訪れる皆さんが楽しみ、心落ち着かすことができるようなお寺にしていきたいと思います。」

ご住職の言葉が示すように、境内には地域の方々、観光の方々が楽しむ声が響いていました。

(文・立命館大学大学院2回生)

参加学生の感想

高蔵寺を訪れる皆さんの楽しむ姿が印象に残っています。今回の訪問時は、残念ながら雨模様の天気で紅葉に最適とは言えない天気でしたが、境内には地域の方々や観光の方々がたくさん訪れていて、この地域のことを教えていただくなど、紅葉からつながる人々との交流が非常に楽しかったです。
また、ご本尊が33年に1度御開帳の秘仏ということで、次回御開帳される約30年後、ご本尊の姿を拝することができるだけでなく、今日集った皆さんと元気でお会いできることを楽しみにしたいと思います。
宝橋山高蔵寺
〒669-2812
兵庫県丹波篠山市高倉276