創建1250年の歴史深い古刹「千光寺」を訪ねる
TOP > いろり端 > 滋賀県甲賀市 千光寺

いろり端

探訪「1200年の魅力交流」

創建1250年の歴史深い古刹「千光寺」を訪ねる

2023年10月21日 訪問
かつて東海道の宿場町・水口宿として旅人が行き交った甲賀市水口町。中心部から少し離れた水口町嵯峨の小高い丘の上に1250年以上の歴史を誇る寺院が佇みます。

冬の気配をかすかに感じる10月中旬、そのような千光寺を学生たちが訪れ、檀家の皆さんにご案内いただきました。

創建1250年にもなる古刹

「千光寺は、今からおよそ1250年ほど前の天平21年(749)、行基菩薩と橘諸兄の尽力により開かれたと伝わっています。創建された時、お寺の名前は現在の『千光寺』という名前ではありませんでした。こちらの石碑に記されているように、『川枯寺』と書いて『せんこじ』と呼ばれていたそうです。これは隣にある八坂神社が物部氏とゆかりのある川枯神と川枯姫神をおまつりし、かつて『川枯神社』と呼ばれていたことに由来します。千光寺は八坂神社の別当寺となっていたので、『川枯寺』と称していたようです。それがいつの頃からか現在のように文字を当てて『千光寺』と称されるようになったと聞いています。」
「この千光寺、往時はいくつもの坊から構成される大きなお寺であったようで、甲賀地域の6つの大きなお寺の総称『甲賀六大寺』の1つでした。しかしながら、天正8年(1580)に織田信長軍による兵火により伽藍のほとんどが焼失してしまいました。その後も何度か火災に見舞われているので、残念ながら千光寺の歴史を示す史料はほとんど残っていません。」


「しかしながら、平安時代に造立されたご本尊・十一面千手観音立像が往時の遺風を漂わせています。現在は収蔵庫にておまつりしているので、そちらへ足を進めましょう。」

平安時代の遺風が漂う十一面千手観音立像

収蔵庫に入り、ついにご本尊と対面です。

「ご本尊の十一面千手観音菩薩立像は、平安時代の終わり頃に造立されたと考えられるお像です。特徴としては、体を取り囲むように配置される腕と頭の上の複数のお顔です。像高は四尺五寸・136cmで一木造のお像です。衣やお顔の表情から平安時代後期ころ、藤原時代に造立されたと考えられています。」

十一面千手観音観音立像の繊細かつ精緻な表現にしばし見惚れ、贅沢な時間を過ごした学生たちでした。

(文・立命館大学大学院2回生)

参加学生の感想

千光寺を訪問して、地域の心の拠り所としてのお寺の姿を垣間見ることができました。無住寺である千光寺を維持・管理されている檀家の皆さんのお話を聞いていると、千光寺やおまつりされているお像、伝わる伝統行事を非常に大切にされていることが強く伝わってきました。観光寺院などでは味わえない、穏やかであたたかな空気感が千光寺の魅力の一つだと感じました。
楊柳山千光寺
〒528-0004
滋賀県甲賀市水口町嶬峨1613