いろり端
探訪「1200年の魅力交流」
改修中の根本中堂から伝わる、
次の世代へと繋げる思いと平和。
比叡山延暦寺の根本中堂(国宝)と廻廊(重要文化財)は、現在、「平成の大改修」中で、建物全体がすっぽりと素(す)屋根に覆われています。1951~1955年(昭和26~30)の「昭和の大改修」から約60年ぶりとなるそうです。
2016年10月から始まり、3年を迎えようとしている今、どのような状況なのかを比叡山延暦寺 根本中堂保存修理事業事務局幹事 礒村良定さんにご案内いただきながら、根本中堂の歴史や大改修に関するお話しをしていただきました。この「平成の大改修」は、2026年3月に終了予定となっています。
2016年10月から始まり、3年を迎えようとしている今、どのような状況なのかを比叡山延暦寺 根本中堂保存修理事業事務局幹事 礒村良定さんにご案内いただきながら、根本中堂の歴史や大改修に関するお話しをしていただきました。この「平成の大改修」は、2026年3月に終了予定となっています。
-「根本中堂」の歴史と建物の特徴を教えてください
根本中堂は、比叡山延暦寺の開祖である伝教大師最澄様が、788年(延暦7)に一乗止観院という建物を立てたのが始まりとされています。その後、焼失の度に復興され、現在の建物は、信長の比叡山焼き討ちの後、徳川家光の命で建立されたもので、6代目となります。
根本中堂の建物は、一重入母屋造りで、根本中堂から中庭を囲むようにコの字型の廻廊が設けられています。内部は、外陣と中陣、内陣に分かれ、内陣は参拝者のための中陣と外陣よりも3mほど低い石敷の土間になっています。内陣にいらっしゃるご本尊様と参拝者の目の高さが同じという、とても珍しい構造になっています。
根本中堂の建物は、一重入母屋造りで、根本中堂から中庭を囲むようにコの字型の廻廊が設けられています。内部は、外陣と中陣、内陣に分かれ、内陣は参拝者のための中陣と外陣よりも3mほど低い石敷の土間になっています。内陣にいらっしゃるご本尊様と参拝者の目の高さが同じという、とても珍しい構造になっています。
-今回の大改修の概要と進捗状況を教えてください
今回の大改修では、根本中堂と廻廊の屋根の葺き替え、内外部の彩色塗装の塗り直しや保存、柱や床などの腐朽工事のほか、飾り金具などの細かな修理も行われます。根本中堂と廻廊を覆う素屋根が約2年の歳月をかけて2018年7月に完成し、現在は、根本中堂の屋根銅板葺の解体をし終え、銅板下の木材の一部を解体中、廻廊の栩葺屋根も約3割解体済みです。そして、根本中堂と廻廊の外部の塗装の掻き落としをほぼ終えた段階です。やっと足場が完成して、改修がスタートしたという状況です。
-今回の大改修で新たな発見などはありましたか
根本中堂の改修に関しては、資料がきっちりと残っているので、ご期待に添えるような新たな大発見というものはありません。しかし、今回、本堂、廻廊ともに屋根の下地の状態が、予想よりも良好であったことに驚いています。廻廊の屋根は“とちぶき”と言われ、長さ45cm、厚さ2.4cmのサワラの木の板を並べ、8.5cmずつずらして重ねてあり、4段ごとに銅板が入っています。サワラの木の板の幅については、板によって異なり、定型のサイズはありません。栩葺や杮葺きでは様々な幅の板が用いられ、つなぎ目が連続とならないよう工夫して葺かれていきます。そういったところも伝統建築物の技術の一つです。また銅板の効果なのか、屋根の四隅のせり上がったところに比べ、腐食がほぼなく非常に状態が良かったんです。銅板から溶け出した銅(イオン)が木材をコーティングし、腐朽を抑えていたようです。
また、本堂と廻廊に施された蟇股(かえるまた※)彫刻の彩色について、文献、実地、科学的な調査をしたところ、3、4回塗り重ねられた形跡が確認されました。当初の塗り分けなど、今後さらに調査を行い、色の決定や破損部分の修復方法などを決定していきます。
(※)和様建築で、梁(はり)や頭貫(かしらぬき)上にあり、上の荷重を支える材の事を言う。カエルが足を開いたような形から「蟇股」または「蛙股」と言われる。
(※)和様建築で、梁(はり)や頭貫(かしらぬき)上にあり、上の荷重を支える材の事を言う。カエルが足を開いたような形から「蟇股」または「蛙股」と言われる。
-今回の大改修で配慮された点はどのようなところでしょうか
改修中も拝観を可能にしたことです。拝観を中止にすれば工事は確かに早く進むのですが、特に伝教大師1200年の大遠忌を控えているため、ご来山の参拝に配慮して拝観可能となる工事としました。初の試みとして根本中堂と廻廊がどのように修復されているのかを間近で見ていただける「修学ステージ」を廻廊の内側に設けました。修復中の文化財を内側から見ることのできる施設を常時公開することは全国的にも珍しく、各所から高評価をいただいています。どなたでも根本中堂の屋根の高さまで登っていただくことができますので、銅板葺の本堂の屋根を真横から見たり、廻廊の屋根を真上から見下ろしたりして、ぜひ職人たちの伝統技術を間近で見ていただきたいです。
さらに、11月までの毎月第2土曜日に(10:30~、14:00~の2回)、無料(巡拝料別途用)で根本中堂改修工事の見学会も開催しています。見学会では、普段立ち入ることのできない工事用の足場に入っていただき、間近で巨大な組物や彫り物などを見ていただける貴重な機会となります。我々修理事務局がご案内とご説明をさせていただきます。
-これから来られる方へメッセージをいただけますか
世の中の皆さんが幸せになりますようにと祈ってきた事を伝える象徴が、根本中堂の「不滅の法灯」であるように、この度の根本中堂の大改修を通して、私たちの祈りの心と、世界遺産であり、国宝であるという文化財及びその修復技術という両方の意味を伝えていきたいと思っています。私たちにとって一番大切なことは「みなさんに伝えていく」という事。またとない機会ですので、ぜひお越しいただきたいと思っております。
ー取材を終えて
今回、普段は立ち入ることのできないエリアまでご案内いただき貴重な経験をさせていただきました。驚いた事は、素屋根の完成に約2年もかかったこと。素屋根とは、いわゆる足場のことですが、根本中堂と廻廊を覆うために新しい技術が取り入れられているそうです。歴史のある建築物を修復するために、最新の技術が使われているというお話しはとても興味深いものでした。
改修中の根本中堂を見学していると、職人たちの技術の凄さに感心することしきりですが、伝教大師最澄の草庵や志を後世に残していきたいと、数え切れない多くの人たちが大切に繋いできた思いをひしひしと感じることができます。素屋根に覆われた「根本中堂」。約60年ぶりというこの風景も長い歴史の中のほんの一瞬で、とても貴重な風景。2026年の工事終了までに一度訪れてみてはいかがでしょうか。
ー取材を終えて
今回、普段は立ち入ることのできないエリアまでご案内いただき貴重な経験をさせていただきました。驚いた事は、素屋根の完成に約2年もかかったこと。素屋根とは、いわゆる足場のことですが、根本中堂と廻廊を覆うために新しい技術が取り入れられているそうです。歴史のある建築物を修復するために、最新の技術が使われているというお話しはとても興味深いものでした。
改修中の根本中堂を見学していると、職人たちの技術の凄さに感心することしきりですが、伝教大師最澄の草庵や志を後世に残していきたいと、数え切れない多くの人たちが大切に繋いできた思いをひしひしと感じることができます。素屋根に覆われた「根本中堂」。約60年ぶりというこの風景も長い歴史の中のほんの一瞬で、とても貴重な風景。2026年の工事終了までに一度訪れてみてはいかがでしょうか。
人から人へと紡がれてきた
大切な想いや魅力について語り合う
地域で育まれてきた歴史や文化を語り合い、
新しい価値と出会います