いろり端
探訪「1200年の魅力交流」
1200年もの歴史を持つ日本古来の音楽・雅楽で
山王祭を支える西条さんと談をとる
今回談をとるのは至誠雅楽会(しせいががくかい)の楽長(がくちょう)を務める西条穂澄(さいじょうほずみ)さん。雅楽は1200年前から変わらず続く日本独特の音楽。山王祭での雅楽の役割や、口伝で受け継がれてきた歴史、雅楽への思いなどをお聞きしました。
ー 雅楽とは、どんな音楽なのですか?
もともとは中国やベトナムから伝わって日本で発展した音楽で、平安時代に形が確立されたと言われています。その歴史は1200年を超えて現代にも受け継がれており、山王祭では厳粛な神事のムードを盛り上げるための役割を果たしています。
私が楽長を務める至誠雅楽会は昭和初期に発足したグループで、当時から山王祭で演奏をしていたと聞いています。
私が楽長を務める至誠雅楽会は昭和初期に発足したグループで、当時から山王祭で演奏をしていたと聞いています。
ー 西条さんが雅楽会に入られたきっかけは?
子どものころから身近だった祭りで、雅楽の演奏を聞いたのが印象に残っていました。祭りに雅楽はあって当たり前だと思っていました。
中高生のころから音楽に興味はありましたが、当時流行していたギターやロックではなく、ピンときたのが雅楽でした。母の知り合いに雅楽会の方がいたので紹介してもらって、30代のころから本格的に始めました。私に雅楽を教えてくれた前楽長が龍笛(りゅうてき)をされていたので、それを受け継いで私も龍笛をしています。
中高生のころから音楽に興味はありましたが、当時流行していたギターやロックではなく、ピンときたのが雅楽でした。母の知り合いに雅楽会の方がいたので紹介してもらって、30代のころから本格的に始めました。私に雅楽を教えてくれた前楽長が龍笛(りゅうてき)をされていたので、それを受け継いで私も龍笛をしています。
ー 初めて演奏されたのはいつですか?
練習を始めて約3ヵ月で山王祭の神事で演奏したのが最初です。まだ満足に音も出せないのに、前楽長に「出ろ」と言われて(笑)。それから毎年演奏させていただいて、20年ほどになります。
ー 山王祭ではどういった役割があるのでしょうか?
雅楽がなくても祭りは進みますが、祭りに彩りを添えて神事を厳かにする役割を担っています。
山王祭では3月27日の真榊神事(まさかきしんじ)では、伐採した榊(さかき)を雄琴から日吉大社へ運ぶ行列の先頭で、演奏をします。昔は歩きながら演奏をする道楽(みちがく)はしていなかったと思いますが、地元の方からのご依頼を受けてさせていただくようになりました。
4月12日の午(うま)の神事でも演奏します。山王祭での私たち雅楽会の役割は、神輿の華やかさとは対照的に厳粛な雰囲気を作り出す一種のBGMとも言えますね。
山王祭では3月27日の真榊神事(まさかきしんじ)では、伐採した榊(さかき)を雄琴から日吉大社へ運ぶ行列の先頭で、演奏をします。昔は歩きながら演奏をする道楽(みちがく)はしていなかったと思いますが、地元の方からのご依頼を受けてさせていただくようになりました。
4月12日の午(うま)の神事でも演奏します。山王祭での私たち雅楽会の役割は、神輿の華やかさとは対照的に厳粛な雰囲気を作り出す一種のBGMとも言えますね。
ー BGMとしての演奏が1200年も続けられてきたのは、なぜでしょうか?
雅楽は、祝詞をあげて粛々と行われる神事に、要所要所で引き締めて注目させる効果があるんです。
山王祭以外でも延暦寺の法要での演奏を頼まれたことがありました。打ち合わせの時にチューニングをしたら、お経とぴったり合う曲があることに気づいたんです。音が合うからお経がより厳かになる上、同じ調で続けることができるんです。
雅楽の持つ調が、日本古来の神事やお経と絶妙なハーモニーを奏でるからこそ、BGMとして演奏する価値があり、また1200年も変わることなく続いてきたのではないかなと思います。
山王祭以外でも延暦寺の法要での演奏を頼まれたことがありました。打ち合わせの時にチューニングをしたら、お経とぴったり合う曲があることに気づいたんです。音が合うからお経がより厳かになる上、同じ調で続けることができるんです。
雅楽の持つ調が、日本古来の神事やお経と絶妙なハーモニーを奏でるからこそ、BGMとして演奏する価値があり、また1200年も変わることなく続いてきたのではないかなと思います。
ー 雅楽はどのようにして伝わってきたのでしょうか?
師匠から弟子へ、譜面を使いながら口伝で伝えられてきました。譜面といっても今の楽譜のようなものではなく、記号などが書かれたもので読めるようになるには時間がかかります。中には音痴の人もいたと思いますが、曲の大枠は1200年前から変わっていないでしょうね。
雅楽は序破急(じょはきゅう)という三部構成で成り立っていますが、その当時の流行りから選曲も変わるため、この三部構成をきちんと伝えるのは難しいんです。
雅楽は序破急(じょはきゅう)という三部構成で成り立っていますが、その当時の流行りから選曲も変わるため、この三部構成をきちんと伝えるのは難しいんです。
ー 雅楽の中で、変わってしまった部分もあるのでしょうか?
ありますよ。例えば龍笛の譜面で、もともとは「干(かん)」という記号が、読み方は同じままで「テ」という字に間違って伝わっているんです。おそらく誰かの書き間違いなのだと思いますが、「テ」と書いて「かん」と読むのは雅楽だけですね。
また、雅楽で使われている言葉で現代に残っているものもあります。
また、雅楽で使われている言葉で現代に残っているものもあります。
例えば笙(しょう)という楽器には、いくつか穴があるのですが、その中のひとつに乞(こつ)と呼ばれるものがあります。この乞は初心者にとっては難しい箇所で、乞を押さえることができれば弾けるという意味から、「コツをつかむ」の語源になったと言われています。
他にも「音頭をとる」「楽屋」「鳴り物」「千秋楽」「打ち合わせ」なども、雅楽から広まった言葉なんです。
他にも「音頭をとる」「楽屋」「鳴り物」「千秋楽」「打ち合わせ」なども、雅楽から広まった言葉なんです。
ー なぜ雅楽の言葉がたくさん残っているのだと思いますか?
雅楽用語が語源になっている言葉や言い回しがたくさん残っているところを見ると、雅楽は神事や宮中だけのものではなく、実は庶民にも親しみのある大衆的な音楽でもあったんじゃないかなと思います。
山王祭では神事の厳粛さを盛り上げるための音楽でもありますが、もっと気楽に楽しめるものだからこそ、雅楽用語が日常的に使われるようになったのではないかと思います。
山王祭では神事の厳粛さを盛り上げるための音楽でもありますが、もっと気楽に楽しめるものだからこそ、雅楽用語が日常的に使われるようになったのではないかと思います。
ー 西条さんにとって、雅楽の魅力はどんなところですか?
山王祭では神事の時に演奏する厳かなものというイメージがあるかもしれませんが、もっと親しみやすいものなんです。例えば、私が演奏している龍笛は一本の竹に穴があるだけの単純な楽器です。私はまだ20年ほどですが、もっとベテランになると音に艶が出るんです。単純だからこそ奥が深くて、楽器そのものを楽しむのも雅楽の魅力だと思います。
ー 今後も山王祭に欠かせない雅楽を受け継いでいくために、心がけていることは?
長い歴史を持つ雅楽を後世へつないでいくことは、とても重要な役目だと思います。それにはやはり後継者が必要です。現在のメンバー7名のうち3名が世襲で継いでいますが、跡継ぎを見つけることが大切です。そのためにも、まずは雅楽をたくさんの人に知ってもら うこと。
そして一生懸命演奏することを心がけています。 1200年続いてきた雅楽本来の魅力を広めていきたいと思っています。
そして一生懸命演奏することを心がけています。 1200年続いてきた雅楽本来の魅力を広めていきたいと思っています。
ー 西条さんにとっての山王祭とは?
やはりなじみ深いものだし、なくてはならないものですね。学校や仕事を休んででも行く。逆に仕事を優先すると怒られるなんてこともありますよ(笑)。
坂本の人たちにとって祭りが生活の一部になっているからこそ、1200年もの間続いてきたんだと思います。
坂本の人たちにとって祭りが生活の一部になっているからこそ、1200年もの間続いてきたんだと思います。
ー 坂本の魅力を教えてください。
山王祭はもちろん日吉大社や延暦寺もあるし、坂本は歴史のある町です。
江戸時代には坂本銭(さかもとせん)が作られていたことでも有名です。そういった坂本の歴史に触れていただきたいなと思います。
江戸時代には坂本銭(さかもとせん)が作られていたことでも有名です。そういった坂本の歴史に触れていただきたいなと思います。
ー 好きな言葉を教えてください。
特に好きな言葉は思いつきませんが、心に残っている言葉は、前楽長から言われた「あと頼むわ」の一言です。
楽器の師匠でもあり、山王祭や下野天神社の祭り、苦労したことや歴史など、いろんなことを教えていただきました。そういう先人の思いも受け継いでいかなければいかないと思っています。
いつか跡継ぎを見つけて私も同じ言葉を言う時が来るかもしれません。でも今はまだまだ現役で演奏し続けたいですね。
楽器の師匠でもあり、山王祭や下野天神社の祭り、苦労したことや歴史など、いろんなことを教えていただきました。そういう先人の思いも受け継いでいかなければいかないと思っています。
いつか跡継ぎを見つけて私も同じ言葉を言う時が来るかもしれません。でも今はまだまだ現役で演奏し続けたいですね。
人から人へと紡がれてきた
大切な想いや魅力について語り合う
地域で育まれてきた歴史や文化を語り合い、
新しい価値と出会います