比叡山延暦寺五大堂のひとつ「飯室谷不動堂」を訪ねる
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いろり端

探訪「1200年の魅力交流」

比叡山延暦寺五大堂のひとつ「飯室谷不動堂」を訪ねる

飯室谷不動堂は比叡山北東の山麓にあり、根本中堂、釈迦堂、横川中堂、無動寺明王堂と並ぶ比叡山延暦寺五大堂のひとつとされています。
 僅かに川のせせらぎ音だけが聞こえ、鬱蒼と茂る木々の中にお像やお堂があり、それらが醸し出す景観は、まるで1200年前の空気を閉じ込めているような静寂が辺りを包んでいます。

 厳かな雰囲気の境内を奥に進むと、滝行をおこなう不動瀧や護摩堂の隣、御供所の一角に不動尊がお祀りされていました。

 千手堂(八角堂)は千日回峰行を2度満行した酒井大阿闍梨の発願により1994年に建立されたそうです。

特別に千日回峰行を満行された大阿闍梨藤波源信住職にお話しをお伺いする機会を頂きました

 山の中で生活する上での食事への向き合い方や、山の上という厳しい環境下でも食べていけるように編み出された精進料理について。

 「精進料理には規定はありません。その季節、その場のものを使います。肉とか魚を使わないというだけで、季節のものを使い、なんとか工夫をして、いろんな食べ方で食卓を飾って食べましょう、というのが精進料理の基本精神であり工夫次第、発想次第です。生き物は大切にしましょうという心があり、例えば山菜など根っこから摘んでしまうと、以降は生えてきません。こういった命の連鎖を考える事も学んでほしいです。
 また、季節に応じて食べ物は変わっていきます。夏は夏の食べ物、冬は冬の食べ物をという事なのですが、今やスーパーに行けば季節問わず、なんでも買えてしまいますが、スーパーに行ってもその季節の食べ物を買って食べる事によって、体が大気になじんで耐える力を備えられ、心身ともに変わってきます。」
 あたりまえに食事がある生活が送れる現代、その食事に真剣に向き合っている人がどれほどいるだろうか、料理に用いられた食材をどのくらい考えているだろうか。昨今はフードロスや食糧不足などの食に関する課題もあり、精進料理の本質を理解し実行することによって、課題の解決に近づけるのではないかと深く感じ、食の大切さや精進料理の魅力を発信していきたいと強く思いました。

僧侶としての考え方をお伺いました。

 「宗教は世界中に様々な宗派がありますが、その宗教を信仰することは物を信じる事です。信仰には畏敬の念があり畏敬の対象は何であるかです。例をあげると、阿弥陀さん、キリストさんなどの色々な宗派の神様に出てきて頂きたいのですが、現実はある訳がないし、見た事もありません。しかし、皆さん崇敬されています。今のこの世の中、やはり畏敬の念は存在します。畏敬の念を持っている人が多いのではないでしょうか。手に掴みそうで、掴めないものに興味があるものです。それで、食べていけるものですから。食べていけなかったら、他の仕事をしています。なかなか、自分が思っている理想の職業はありませんからね。僕は、たまたま巡り合えて、ずっと続けられているのは、ありがたいなと感じています。
 宗教は様々な宗に分かれていますが、それは、気にしなくてもいいと思います。この宗派はこれをしなくてはいけないなどの基本的な事はあるにせよ、特に気にしなくてもいいです。だからここに浄土宗の方が来られたりします。「なぜ、宗派が違うのに来るの?」と聞いたところ浄土宗では理解できない事が天台宗にはあって興味があるとの返事でした。興味がある事によって別の考え方を知る事ができます。宗派は後から考える事であって、手を併せることは、皆、最初から同じです。人間のエゴで宗派が変わるだけです。」

飯室谷不動堂のご訪問を終えて

 天台宗の僧侶だから天台宗の信者さんだけを受け入れると思っていましたが、藤波住職はそうではなくどんな宗派の人でも受け入れるというお話しをされました。他の宗派では分からないことでも天台宗では分かる事があり、その逆もまた然り、宗派は人のエゴで分れたものだから自分の興味に従えば良い、という柔軟な発想を持っておられ、仏様に手を合わせるという仏教の本質を大切にされていると感じました。
文:大学コラボプロジェクト参加大学生
比叡山飯室谷 不動堂
〒520-0116  滋賀県大津市坂本本町飯室谷